なっち……
いや、もぅ、なんつーかさ…………。
まずはこれを見てよ。
あ、ごめん、間違えた。こっちこっち。
もぅ、なんつーかさ…………
つんくいっぺん死ね
なんだ
後浦なつみっつーのは。なんだ
この意味不明のカツラは。
だいたい、カツラなんてもんはISSAかあいぼんにでもやっときゃいいんだよ! あいぼんなんかなぁ! ジェットコースターに乗っただけで必死んなって前髪隠してたんだぞ!!
……なんかもう、ホント脱力。
「泥舟から脱出してみれば、そこは底なし沼」たぁよく言ったもんで。
大丈夫かなぁなつみちゃんホントに……。
○ ○ ○間の悪いことにというかそういう表現でいいのか、白砂のもう一人の知り合いの「なっち」が、ついこの間、自殺しました。
もうなにしてんだよなっち……(泣)。
白砂がフィギュアスケートにハマったのが長野五輪の時。クリクとキャンデ、ストイコらの演技に痺れました。エルドリッジのスピンもかっこよかったなぁ。あの当時はエレナは子供だった……(懐)。
で、そういうフィギュアヲタになった様を職場では全然見せていなかったんですが、ソルトレイク五輪の時だったかな、ポロっと言っちゃったのね、なっちに。ヲタですみたいなことを。席が隣だったから。
そしたらなっちは、笑顔で白砂に言った。
「あたし、昔フィギュアスケートやってたんだよ」
いや驚いたのなんの。
背が高くて細くて、そりゃあリンクでは映えるだろうって容姿だったけどね。まさか経験者だったとは。
その時だったかなぁ、凄いスケートのこと喋ったのは。ちょうど、エレナの金メダルにケチがついた時で、それはそれは凄い勢いで白砂は語ったね(笑)。フィギュアスケートがどれだけ「芸術」スポーツなのか。エレナ達の演技がどれだけ凄く、あの採決がどれだけ馬鹿馬鹿しい最低のものだったか。技術点芸術点の採点方法が最近狂ってるとか、そんなことまで言ったかな。
なっちはなっちで、スケートの体験談をいろいろ教えてくれた。スケートは凄く金が掛かるけど、自分のところはそんな金持ちじゃないからレッスン代出すだけでも大変だったとか、振り付けつけてもらうだけで結構な出費になって、おまけに曲を録音するのにも金が掛かるから自分でやったとか、他の人の分の曲を自分で編集してレッスン代の足してしてたとか……。
演技のことについてもいろいろ言ってたなぁ。
やっぱり全体的に技術重視になってたりとか、まぁそれは最低限の技術がないから仕方がないんだけど、もう少し「演ずること」についての意識があってもよかったとか、自分はダブルサルコウが最高の持ち技だったんで苦労したとか、仲間から「なんにもしないで黙ってリンクに立ってりゃ高得点なのに」なんて言われたって言ってたな(笑)。
結局なっちは一時期リンクから離れたんだけど、そのあと「団体種目の人数が足りないから」とかいう理由でもう一度復帰。でも、自分はやっぱ人と合わせて滑るのは無理だったとかで、それもすぐ辞めちゃったらしい。
結局、2年いっしょに仕事しただけでなっちは職場異動してしまったんだけど、いつだったか言ってくれた「白砂さんのフィギュアスケートの話をもっと昔に聞いてたら、まだ滑ってたかもしんないね」って言葉は白砂の宝物です。いやぁ、ホントに熱かったのよそん時は(笑)。こちとらたまにルッツとフリップを見間違えるようなシロートなんだけど、そんなシロートの話を、なっちは真剣に聞いてくれました。
それから数年後。
ちょっとだけ図書館で働くことになったなっちは、もう昔のなっちじゃなかった。なんかもう、それ見たらショックでねぇ……。一ヶ月くらいいたんだけど、ほとんど話もできなかった。
そんな経緯があったから、今回のことは、全く予想がつかなかったわけではありませんでした。けど、やっぱりショックだったなぁ……。
○ ○ ○いつだったか、なっちがビデオを貸してくれたことがありました。白砂が撮り逃したスケートの番組かなんかだったと思います。
それを返す時、ちょっと悪戯心を起こして、ビデオといっしょにワープロで打った手紙をつけときました。たった一行の言葉だったんですが、それを見て、なっちは笑って訊いてきました。
「なぁにこれ? かお?」
( ● ´ ー ` ● )なっちありがとう