伏土竜の麻雀戦術論

対応編その3 安全牌

第1章 完全安全牌

 まず最初に、絶対振り込むことのない牌(完全安全牌・略して完安とか、絶対安全牌・略して絶安と呼びます)から解説しましょう。

  その1 3人が共通して捨てている牌

 麻雀のルールの一つに、現物フリテンという項があります。
「自分が河に捨てた牌で他からロンアガりできない」という決めごとです。
 仮に相手Aがを捨てていたとしたら、相手Aはでロンアガりできません。
 これを逆の立場で考えてみてください。
 自分がいくらを捨てたとしても、相手Aに振り込むことは「絶対」にないのです。

 では、もし3人が共通して捨てている牌があればどうでしょう。
 そうです。
 その牌は、まるで水戸黄門が持つ葵の印籠のように絶対の安全が保証されます

 少し話が逸れますが、3人が共通して捨てている牌は、いつ捨てようと絶対の安全が保証されます。この「いつ捨てようと」がポイントで、これはつまり「自分の好きなときに捨てられる」ということです。
 これを利用した手筋があります。
 自分の手牌進行中に3人が共通して捨てている牌が手中にできたら、手牌進行の妨げにならない限り安全牌として残しておくのです。すると、相手から攻撃を受けた際に確実に1巡の安全が保証されます。
 相手から攻撃を受けた際に、1枚も安全な牌がなくて振り込みになってしまうことを考えてもらえれば、この手筋の有効性を理解してもらえるでしょう。

 ただし。
 効率編で触れたように、あくまで「手牌進行の妨げにならない限り」です。自分がアガりを目指すならば、受け入れ枚数を減らしてまで無理に抱える必要はありません。

  その2 自分の上家が直前に捨てた牌

 麻雀のルールの一つに、同巡内フリテンという項があります。
「リーチの有無に関わらず、(故意にしろ過失にしろ)何らかの理由で一度ロンアガりを見逃したなら、自分のツモ巡が経過するまで他からロンアガりできない」という決めごとです。
 のように、高め安めがある手牌で安めが出てしまい、安めではアガりたくないからと言ってアガり牌を見逃すのは打ち手個人の自由です。テンパイしてアガり牌が出たら必ずロンアガりしなければならないというルールはないのですから、アガろうとアガるまいと本人の意思次第です。
 けれども、ひとたびアガりを見逃したなら、自分のツモ巡が経過するまでは他からロンアガリすることは許されていません。

〜 伏土竜のちょっとコラム 〜

 このルールは、誰か一人を故意に狙い打ちしづらくするために設けられたそうです。
 点数を沢山持っている相手から直撃を狙うことで一気に点差を詰めるないしは逆転を狙う……といった戦術的な理由ではなく、個人的に気にくわないからとかのゲームとは全く関係ないところで、いわゆる嫌がらせとしての狙い打ちが起きるから、というのがその理由だそうです。
 これは私の憶測ですが、フリテンルールの創設期にはそういった悪質な行為が多かったんでしょうね。

 このルールを利用した絶対の安全牌があります。
 自分の上家が捨てた牌と同一種の牌です。自分の上家に対しては現物ですし、他の2人には同巡になるからです。
 よって、これまた絶対の安全が保証されます。

 この同順内フリテンを利用すれば、手牌にある危険牌を簡単に処理することができます。
 例えば、自分は今タンピンドラドラのイーシャンテンである。しかし手の内にまだ1枚も出ていないダブがあって、しかも下家がホンイツっぽい仕掛けをしている。ここで何にも考えずにを切れればいいんですが、まぁそれは度胸がいいというより無謀ですね(笑)。
 そんな時、自分の上家がを捨ててくれたらその瞬間がチャンスです。絶対確実に捨てられるのですから、上家に続けてを捨て処分してしまいましょう。
 これは「合わせ打ち」という基本テクニックです。

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