お待たせしました。
入門編・効率編・対応編に続く、第4部は展開編です。
まずは「展開」とはなにか、その定義から説明しましょう。
その局(のその場面)において「自分のなすべきこと」「自分がしてはならないこと」を、残り局数・持ち点・点差・巡目・親か子か・親番の有無・手牌の進展度などから判断すること。
解りましたか?
いきなりこんな定義付けを言われても解らないですよね。
そこで下記の例を見てください。
オーラス。
南家の自分は42500持ちの2着で、トップは親。44000持ちです。3着目以下は関係ないとします。
この局面での「なすべきこと」は何でしょう?
また「してはならないこと」は?
2000点のアガリでトップなのですから、誰だって2000点の手作りをしますよね。
「アガリに向かわない」「オリきる」なんてのは論外(笑)としても、「この局は1000点でいいや」などとは誰も考えないでしょう。
では、なぜ2000点の手作りが必要なのでしょうか?
言うまでもなく、トップになるためです。
この状況下では、2000点の手を作ることが「なすべきこと」で、それ以外のことは全て「してはならないこと」です。
このように、麻雀には「なすべきこと」「してはならないこと」があるんです。オーラスは、トップになる(あるいは順位を一つでも上げる)という明確な目標があるので、もっとも考えやすいと思います。
しかし、実戦はオーラス以外にも様々な局面があります。
そうした局面においても、同じように「なすべきこと」「してはならないこと」を考えて局を進行させる。
これが「展開」です。
ところで。
これまでの(既存の)麻雀戦術論の中では、「展開」というものについてはあまり語られてきませんでした。この講座で初めて「展開」という麻雀用語を目にする方もいるかと思います。
麻雀の一大戦術であるはずの「展開」が、なぜあまり語られてこなかったのか。
その理由についてちょっと触れておきたいと思います。
理由はいくつか考えられますが、筆者は以下の点が大きな原因になっていると考えています。
「俺、麻雀できるよ」「私、麻雀できます」と言う人の何割が、果たして対応までの技術力を身に付けているでしょうか(ちなみに、筆者は対応編までの技術力を麻雀における基礎体力と考えています)。
残念ながら非常に少ないと言わざるを得ません。
仮に麻雀人口を10とした場合、
- 点数計算が怪しい入門以前のクラスが1割(もっとかな(笑))
- 点数計算は卒業したものの、牌効率が怪しい入門クラスが2割
- 牌効率はクリアしたものの、対応の種類がベタオリと全ツッパしかない自称中級クラスが3割。
- 対応はできるものの、「展開」をまったく無視ないしは理解しようとしない自称上級レベルが2割。
といった人口分布になるでしょうか。
つまり、「展開を理解し、それに合わせた打牌選択ができる」クラスは、全体のわずかに2割程度しかいないということです
「展開」を理解し使いこなすには、対応までの基礎体力を保持していることが必要条件です。しかし、麻雀人口の大多数は、上記のように基礎体力すら持ってはいません。
これを「展開」を知っているクラスの人から見れば、「展開なんていくら解説しても、解るレベルの方が少ないんじゃ無駄にしかならないよ」
ということになります。
これが第一の理由。
「展開」は似たようなものはありえても、同じものは1つとしてありません。
四人の持ち点が違えば、同じ手牌でも展開は異なります。
四人の手牌が同じでも、持ち点が違えば展開は異なります。
四人の持ち点・手牌がまったく同じでも、ドラが違えば展開は異なります。
持ち点・手牌・ドラなどが全部同じなんてことは(確率上は存在し得たとしても)あり得ず、したがって「展開」に2つとして同じものなんてありません。
これを解説する側から見ると、いくら細かな設定をしてそれについて一生懸命解説しても、実戦で同じ設定で迎えられることなどありはしません。
ゆえに、どうしても解説すること自体が困難になってしまう。
これが第二の理由。
以上の二点、解説を必要とする層が少ないためと、解説すること自体に難があるため、これまで展開はあまり語られてきませんでした(実を言えば、もうひとつ大きな理由があります。これについては、ある程度解説が進んでから再度触れます)。
筆者も、今回「展開」をどう解説するかについて、かなり悩みました。
悩んだ結果、出た結論は、
考え方の元となる大まかな基準を設けて、その基準について解説する
というものでした。
解説する側にとっても非常につらく厳しい旅ですが、「展開」を乗り越えた先には、これまでのあなたが打ってきた麻雀とはまったく異なる世界が広がっています。ぜひともその世界をご覧になって下さい。