将棋コラム
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風車と8四歩 |
Date: 2002-06-10 (Mon) |
今年も始まった社会人リーグ。白砂も希望に(だけは)燃えて参加した。前年度と同じく全然実戦を指していない状況での参戦だが、果たしてどうなったのか。
詳しい実戦譜は別項に譲るとして、ここはコラムらしく各局のポイントだけを振り返ってみる。
まず1図。先手が▲6九金と引いたところ。6八にいた金をわざわざ引くというのはもう完全に手待ち状態で、ここでき風車の作戦成功だと思う。
さて、ここで後手の白砂はどう指したか。
△2五桂▲4五歩△3七角▲同桂△同桂成▲4四歩△同銀▲2九飛(2図)
白砂は△2五桂と指した。
確かに風車にはよくある一手で狙いの一手でもあるのだが、ここは早かった。本譜の▲4五歩が好手で、これで先手は歩切れにはならない。もっとも、▲4五歩には△2六歩と突いておき、▲4四歩△同銀▲2六歩ならそこで△3七角とか、いろいろ指しようはあったと思う。とにかく本譜の順は暴走気味で、成桂を作ったものの角桂交換ではちっとも得をしていない。
1図での最善手は△8四歩ではないか、との指摘を受けた。後でも出てくる変化なのだが、とにかくここの歩は突いていて損はない。第一、先手が手待ちをしているのにこちらが局面を打開してやる必要なんてどこにもなかったのだ。
風車における「待ち」の心理状態を保てなかった。久しぶりの実戦で焦ってしまったんだと思う。余裕のある時なら、相手が手待ちをしているのであればわざとでも攻めないくらいなのに(笑)。
さて2図。
一目△4六歩とか△4七歩とかしたい局面である。
しかし、臆病な白砂はここで▲2六角の両取りが見えてしまった。冷静に考えれば△3八成桂が利くので両取りでもなんでもないのだが、実戦不足の時は厭な手ばかり見えるものである。
で、白砂はどう指したか。
△4三歩
をい、てなもんである。
最初に前述の攻める手を読んだ。しかしそれは両取りがあるなぁと思って断念した。
次に飛車を追う手を考えたが、これは持駒が桂では追いきれないと思い捨てた。
そのあと考えたのが△5三銀と引く手だった。これはなんとなく筋がいいし、あとで△4一飛と回る手もある。この感触は悪くないと思った。
ただ、先に▲4九飛と回られた時に困るなぁと考えてしまった。△4三歩は▲同飛成△同金▲3二角が厭だなぁと。
そうなるとなにか受けないといけないな、と考え、「ここは辛抱だ」と△4三歩と指した……というわけなのである。
「だったら先に△4一飛と回ればいいじゃないですか」
う……。
気づかなかった……(泣)。
というのは冗談で、実はこれでも▲2三飛成△同金▲3二角があるかなぁと思ったのである。どうやら、対局している時は「玉形が違うから、どっか一点突破されたら負ける」という強迫観念があったようだ。
冷静に考えれば、▲3二角には△8一飛▲2三角成△2九飛で後手が指せていると思う。要は実戦不足から来る怯えでしかなかった。
ただ。
上記の変化になった時でも、8筋の歩が8三と8四ではだいぶ話が違ってくる。歩が8四ならば、やるかどうかは別として△8五桂がいきなり先手となる(▲同桂△同歩の時の、歩が延びていく味がたまらなくいい)。
そういうことを考えても、やはり△8四歩は必要だと思う。それを指せなかったようでは、やはりこの将棋は勝てないのだろう。
ついでに言うと、この将棋は3図のように進んだ。
先手が▲8六桂と、後手の急所である桂頭を攻めてきたところだ。
ここでも、△8四歩が突いてあれば、成否は別にして△8五桂という手が生じた。▲同桂は△同歩でせっかく打った桂が死んでしまうし、別の手では△7七桂成▲同金で弱点の桂を捌くことができる。
△8四歩は必要
とにかくそれが強烈に印象付けられた一局だった。
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