将棋コラム
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大天才の「完璧な寄せ」 |
Date: 2003-08-11 (Mon) |
『将棋世界』の「新・対局日誌」から。加藤一二三9段自らが「完璧」と称した寄せを。
1図はもう終盤戦。ここからどう寄せるか……というところ。
△3九飛▲2六銀△3五銀▲同銀△同金▲3八香△3七歩▲2八銀(2図)
△3九飛は△3六桂を狙っているので、一目こう打ちたくなるところだろう。
ちなみに、『激指2』にこの局面を解析させたところ、△7八歩▲6九金△2九飛▲5二成桂△7九歩成▲同金△3六桂……という手順を回答してきた。△2九飛打つくらいだったら△3九飛打てよなぁー(笑)。まぁ、きっと「大駒が近すぎて当たりになる」ということで低く評価されてしまっているのだろう。
これに対して▲2六銀もまた難しい手だ。
△3六桂を防ぐのだから、普通は▲3八香とかなのだろうが、それだと利かされでそのまま負けると思ったのだろう。▲2六銀は、△3六桂なら▲3七金でギリギリ耐える狙いだと思う。それでもかなり苦しいが、上部が厚くなっているので入玉される心配もないし、飛車を手に持っているので攻めも狙える。
それを看破したのが△3五銀で、銀を手に持って玉の逃げ道も開けて……と、かなり味のいい手。▲同銀△同金は仕方がないところだが、▲3八香△3七歩▲2八銀と飛車を責めて、なんだか急にもちゃもちゃっとしてきた。
△2九飛成は▲3七香でも▲3七銀でも展開がおかしい。逆転もありうる局面だが、カトピンさんは怒涛の寄せを見せる。
△3八飛成▲同金△同歩成▲5二成桂△4九銀▲6九玉(3図)
△3八飛成が豪快な一手。
この手自体は、2図を見れば初段程度でも指せると思う。
しかし、△3五銀の好手を指したあとに▲3八香▲2八銀の粘りを喰い、時刻は午前0時近く。この条件でこの手が指せるというのは、さすがプロだ。
▲5二成桂は形作りに近いと思う。しいて指すなら▲6九玉だろうが、本譜の指し方をすればやはり簡単に寄ってしまいそうだ。
△7六香▲7七銀△同香成▲同角△8七銀▲8八金△同銀成▲同角△7六桂▲7七角△8八金
ここからは簡単。
△7六香がうまい脱出路封鎖で、△5八金の詰めろ。△8七銀も同様の詰めろ。△7六桂は△6八金の詰めろ。最終手の△8八金も、△5八金の詰めろ。ということで、オール詰めろできっちり仕上げた。
ちなみに、△7六桂に▲7八玉とすれば手数は長引くかもしれないが、△8八桂成▲同玉△7六金とでもしておけばやっぱり逃げられない。金がないので、受けようがないのだ。
加藤9段は、順位戦中盤で阿部・郷田と、ラス前で深浦と当たる。
その辺を喰っちゃったりすると、順位戦も混戦になって面白いと思う。データは持っていないんで印象でしかないんだけど、その辺のメンツとは(思考がかみ合うという意味で)相性がいいと思うので、冗談ではなく期待している。
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