さて、高校生です。
立派な推理小説オタクに成長した白砂は、読書癖が呼んでか(<呼ばん呼ばん)図書室に入り浸ることになります。高校入学と同時にすぐに図書室に出向き、その蔵書の多さに感動を覚えつつ1日2冊(同時に借りられるのが2冊までだったんです)の読書ペースを半年以上続けていました。
同じ趣味を持つ人というのはそこそこいるもので、図書室に足繁く通ううち、同じように読書好きの人達がいることが判りました。特に向こうにしてみれば毎日毎日推理小説を借りていく男が珍しかったんでしょう。挨拶を交わすようになり、親しく話をするまでにはさして時間はかかりませんでした。
そんな仲間は総勢で10人くらいだったでしょうか。みんなでいろいろと話していくうちに、どうして出てきたものか文化祭で同人誌を出そうという運びになりました。確か、3年生の山本という人が小説や詩をよく書いていて、せっかくだから日の目を見させてやろう(笑)ということだったと思います。まぁ、大体が小説を読むのが好きな人は書きたいネタを1つや2つ持っているもので、俺も私もということでどんどん執筆陣が増えていったんだと思います(実はよく覚えてない)。
白砂は中学時代からコツコツと小説を書いていたこともあってすぐにこの企画には乗ったんですが、問題が1つありました。というのも、この企画はそもそも図書委員会の企画としてやろうというものだったんです。白砂は「モノを書く」ということに魅力を感じて新聞委員会に入ってしまったので、参加資格がなかったんです。
え? コンピュータの話……?
もう少し待ってて下さい。もうすぐ出てきます。
さて。
というわけで参加資格がない白砂なんですが、結局特例ということで参加を認めてもらいました。執筆陣が同時に編集者になるという同人誌らしい(笑)状況の中、幾度となく編集会議が開かれました。リレー小説のネタの問題もありましたし、小説を載せる順番や遅筆の作家の尻を叩くという目的もありました。しかし、その場で「書け」と言われたって書けねぇよな普通……(笑)。
そうやって会議が続く中、夏休みに佐藤さんという3年生の家で会議をやろう、という運びになりました。文化祭が9月なんで、もう締め切りギリギリの状態。ここでもう一度(いろいろな意味で)きっちりと締めていこうというわけです。
その佐藤さんの家にあったのが、マイコンでした。
前の加悦さんは社会人でしたし年もだいぶ上でした。だからマイコンを持っているということも「大人だからな〜」ということで別世界のものとして認識していました。
しかし、佐藤さんは私と2つ(実は3つなんですがまぁそれはいいでしょう)しか違いません。その佐藤さんでさえマイコンを持っているんです。
自分も買えるんじゃないか……。
麻雀とピンボールに熱中しながら(←編集会議はどうした)、白砂はそんな思いを抱いていました。
もっとも、分別のつかないガキではありません。
やっぱりマイコンは非常に高価に見えました。なにしろ自分では動かせないんですから、もの凄い複雑な機械にしか見えていなかったと思います。「こんな難しそうな機械なんだから、高いんだろ〜な〜」というわけです(←ガキの思考じゃないか(笑))。
とにもかくにも、こうして白砂は再びマイコンと出会いました。
結局佐藤さん宅にはこのあと二度ほどお邪魔しただけでしたが、身近な人が、しかも同じ高校生がマイコンを持っているという事実は、白砂の今後に多大な影響を及ぼしたのでした。