3二金戦法研究
2003.4.22
最後に、仕掛けの前に一手△4二銀と入れる変化を見ていく。
今までの変化は、▲5六飛と先手を取られたために主導権を握られ、▲8六歩という捌きを許した、とも言える。それを未然に防ぐのがこの△4二銀だ。
これに対しては、今まで同様▲9七角(第10図)とする。▲7七金(変化38図)という手も考えられるのだが、これについては後述する。
▲9七角に対して△3四歩▲7七桂を入れるかどうかは微妙だが、とりあえず入れないで先を進める。△3四歩の変化は、そのあとに対比を見つつ調べてみたい。
で、△3四歩を入れずに△7四歩。
▲7四同歩△7二飛までは必然で、△7二飛で△7四同金は▲6四角がある。
ここで先手がどう指すか。
▲5六飛という選択肢もないわけではない。△7四金なら▲8六歩で元の形に戻る(笑)。
しかし、△7四金で△3四歩とすれば、▲7七桂△7四金▲8六歩に△7三桂▲8五歩△同桂▲同桂△9九角成▲8八角△同馬▲同銀△8五金▲7七銀△5四香(変化39図)といった感じで飛車をいじめることができそうだ。これなら(▲8一角などの傷はあるにせよ)後手もなんとか戦えると思う。
そこで、▲5六飛ではなく▲8六歩と捌きに出る。本手順でも出てきた手で、とにかく捌けばいい、という感覚である。
これに対して△7四金とか△7四銀と歩を取る手は、▲8五歩とされて少し困る。
そのままでは▲7七桂から▲7五歩というコースが見えているし、△7五歩と押さえても▲8六飛△8二飛(これを省くと▲8四歩で困る)▲7七桂(変化40図)で、▲8七金から▲7六歩の攻めを防げない。金銀の厚みがうまく働いていない形なので、これは後手がまずい。
かといって△8六同歩と取る手は▲同飛とされ、△8四歩は▲8八銀△7四金▲8七銀△8五歩▲3六飛△7五歩▲7七桂(変化41図)、△8二飛も▲8八銀△8四金▲8七銀△8五金▲3六飛△7四銀▲8六歩△8四金▲7七桂(変化42図)。
どちらにしても、78筋戦いになるのを止めることができない。止められなければ、居玉と美濃囲いという玉の安定度がそのまま形勢の差となってしまうので、先手有利となる。
残る手段は△9五歩(変化43図)の角頭攻めだが、構わず▲8五歩とされ、△9六歩に▲8六角とかわされてしまう。
これで、何もしなければ▲9六香△同香▲9五角があるし、△9七歩成も▲同香△同香成▲9五角(変化44図)でやはり止まらない。
変化44図以下は、△4一玉に▲7三歩成△同桂▲8四歩△8二金▲7四歩△6五桂▲8三歩成△同金▲7三歩成(変化45図)である。
というわけで、△3四歩▲7七桂の交換を入れない場合は先手が有利になった。
今度は、△3四歩▲7七桂の2手を入れた変化を見ていく。
ここから△7四歩▲同歩△7二飛▲8六歩(変化46図)まではもう必然と言っていいだろう。
変化46図で△7四金や△7四銀は、△3四歩▲7七桂の効果が全くなく、▲8五歩△7五歩▲3六飛以下同じような形になる。
△8六同歩▲同飛△8四歩▲8八銀の展開は、7七桂と跳ねさせているために少し違う変化となる。△7四金だと、▲7五歩(変化47図)の軽手があるのだ。これは7七桂が先手に得となった形で、△8五金と出られない(△3四歩▲7七桂の交換がなければ、△8五金▲3六飛△7五金で後手も指せる)。よって△7四銀の一手となる。
ここで先手が「さっきと同じ」と▲8七銀と指すと、△7五銀▲3六飛△7六歩▲7五角△7七歩成(変化48図)で後手有利となる。
この変化は後手の角の利きがあって7七に桂が跳ねていて傷があるからこそ成立するもので、△3四歩▲7七桂の交換が完全に後手の得になっている。
正着は先に飛車をかわす▲3六飛。△7五歩とか△7三金などでは▲8七銀で同じような形となり好ましくない。△7五銀と出る一手だ。
7五の駒が銀なので、角を切って8六に打って▲7六飛、という飛車交換強要の筋がない。そこで▲7六歩△同銀▲6四角△7七銀成▲同銀(変化49図)と決戦する。これは後手に傷が多く、先手有利だと思う。
以上、△3四歩▲7七桂の2手を交換した変化を見てきたが、どうも先手の方が有利になりやすいと思われる。△3四歩は必ずしも必要な手ではないが、▲7七桂はほとんどの場合「あとで先手が指す手」なので、一手の価値が違うからだろう。