１図は２次予選の福崎−内藤戦。もう終盤も終盤である。
序盤から先手の福崎が突っ張った指し方を見せ、それに対して内藤が反発するといった展開が続いた。そこも面白かったのだが、ここからの内藤の指し方が凄かった。
△８六桂▲同歩△８七銀▲同金△５九龍▲同金△７八銀▲９八玉△９九金▲同玉△８七銀成（２図）
桂を捨て、銀を捨て、飛車を捨て、銀を捨て、金を捨て、と、５連発の捨駒であっという間に先手玉を追い詰めてしまった。この間変化なし。目で追えない方は是非とも盤に並べて欲しい。なんか自分が凄く強くなった気がすること請け合いである。
２図以下は▲８八金なら△９八香▲同金△８九金以下の即詰み。内藤自身は２図以下を▲８八飛△同成銀▲同玉△８九飛▲同玉△８七香（即詰み）と考え、「そうなれば形が綺麗だな」と思っていたという。いや、粋な人や内藤はんは……（笑）。
ところがどっこい、まだまだ山場があったのである。
▲９三銀△同香▲９二金△同玉▲８四桂△同歩▲６五角△７四歩▲８七角△８八金（３図）まで後手勝ち
▲９三銀がなんとも凄い捨て駒だ。
△９三同桂は▲７一銀△同金▲７四桂以下の詰み。△７一同金で△７一同玉も▲６一飛△同玉▲５三桂△６二玉▲６一飛△５三玉▲４四金以下の詰み。最初の△９三同桂で△９三同玉としても、▲８五桂△８四玉▲７六桂でやはりピッタリ詰み上がる。とすると△９三同香しかないが、それだと本譜のように▲９二金から８七の成銀を抜く筋がある。
内藤はこの筋が見えて「負けたか……」と思ったそうだ。
こんなことなら△８七銀成では△８七銀不成にすればよかったとか、そんなことまで考えたらしい（不成ならば、△９三同玉と取って、７六に桂が打てないので後手玉は詰まない）。
ところが、勝ち将棋というのはよくできたもので、冷静に見てみると８七の銀を取られても、３図のように△８八金と打って先手玉は即詰だった。
なかなかスリリングな終盤で、久しぶりに新聞将棋を見て感動してしまった。
最後の内藤の言葉がまたよかった。
「手数は１０８手かぁ。除夜の鐘でめでたいなぁ。チャンバラしたからまぁええ、うん、ありがと。今夜は奢らせてもらうわ」
ホントに粋なお人や……（笑）。