新刊棋書



 新しい詰将棋初段150題
著者名羽生 善治/監修

級位者
出版社名成美堂出版 初段〜3段
発行年月/価格2006.9/777円 4段以上
感想

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 最前線物語2
著者名深浦 康市/著

級位者☆☆☆
出版社名浅川書房 初段〜3段☆☆☆☆☆
発行年月/価格2006.8/1,470円 4段以上☆☆☆☆☆
感想

『これが最前線だ!』『最前線物語』に続く、定跡の最前線を追うシリーズ。

 前著『最前線物語』はほとんどが藤井システム&8五飛戦法だったが、今回はいろんな戦法が登場している。
 振り飛車系ではゴキゲン中飛車、三間飛車(含早石田)、相振り飛車。居飛車系では一手損角換わり。この辺りはタイトル戦でも登場している戦形だけに、今回しっかりと解説してくれたのは嬉しく感じる。

 ただ、残念なことに2点ほど問題があって……。
 一つは、タイトル戦にも登場した「メジャーな戦法」を解説しているため、どれもこれも見たような気がする変化ばかりであるということ。もちろん、本書は「最前線のまとめ」なのだからそれで問題ないのだが、前2著に比べると新味感がやや薄く感じた。まぁ、特に前著は狭く深くだったから、それで余計にそう感じてしまうのだと思う。
 二つ目は、実は『将棋世界』の勝又講座と結構内容がかぶってしまっている点。一手損角換わり、ゴキゲン中飛車、藤井システム、相振りと、どれも講座で扱った内容なのだ。しかも相振りなんかは講座の方が詳しかったりするし。これも本書が悪いわけではないんだけどね。

 以上のようなことがあったので、白砂が読んだ感触としては「そんなに目新しくはない」という感じ。
 上記の欠点(?)も、本としてまとめてあるという功績は大きいし、調べる方もラクだからあっても問題はない。白砂の場合『将棋世界』は図書館に寄付してしまっているので特にあると嬉しい。

 8/21に八重洲ブックセンターに買いに行ったら、フラゲにも関わらず既に在庫なし。平積みの本棚にポッカリそこだけ空間ができていた。店員に訊いたところ、18冊あった在庫がすべて売れたらしい(あそこはPC管理なので、入荷と販売分がすぐわかる)。「こないだ仕入れたばっかりなんですけど、いや、こんなに売れてたんですね」という店員の言葉は、本書の価値を十二分に物語っていると思う。
 手元に置いて損はない一冊だろう。

(2006.9.2 記)

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 終盤の謎
著者名森 信雄/著

級位者☆☆☆
出版社名山海堂 初段〜3段☆☆☆☆
発行年月/価格2006.8/1,260円 4段以上☆☆☆
感想

 前著『終盤の鬼』に続く「寄せのレッスン本」。ただし、前著もそうだったが、基本に忠実ではあるのだが問題自体はスーパートリックである(まえがきにも断り書きがある)。

 もともと白砂はこういう「次の一手本」というものをあまり信用していないので(笑)、その点でやや評価は辛くなっている。ただ、本書は「詰めろ逃れの詰めろ」といった切り返しの技が基本なので、自陣敵陣に目を配りつつ、速度計算もしつつ……と、結構高度なことを考えないといけない場面もある。まぁ、大体は妙手一発で終わるんだけどね(爆)。

 正直な感想を言うと、スーパートリックの続きのような「鑑賞物」という位置づけに近いと思う。

(2006.9.2 記)

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 将棋・ひと目の手筋
著者名渡辺 明/監修 週刊将棋/編

級位者
出版社名毎日コミュニケーションズ 初段〜3段
発行年月/価格2006.8/1,050円 4段以上
感想

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 将棋名人戦七番勝負 第64期
著者名毎日新聞社/編

級位者
出版社名毎日新聞社 初段〜3段
発行年月/価格2006.8/1,890円 4段以上
感想

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 新・振り飛車党宣言! 3
著者名千葉幸生 藤倉勇樹 中村亮介/著

級位者
出版社名毎日コミュニケーションズ 初段〜3段
発行年月/価格2006.8/1,365円 4段以上
感想

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 不思議流受けのヒント
著者名中村 修/著

級位者☆☆☆☆
出版社名創元社 初段〜3段☆☆☆☆
発行年月/価格2006.8/1,260円 4段以上☆☆☆
感想

「受ける青春」おさむちゃん(<こら)の、将棋の「受け」の部分について書かれた本。

 結論から言ってしまうと、なんともよく判らないできあがりになっている。
 というのも、扱っている題材の難易度がバラバラなのだ。初級レベルの歩の手筋を解説していたかと思えば、ギリギリで切らせて入玉などといった高度な話をしている。合わせ歩を習う人間が、10手先の局面を考えての受けの手なんて指せるかっ!(笑)
 ただ、逆に言うと、どの棋力の人でもそれなりに楽しめる内容にはなっていると思う。
 級位者の人は、易しい手筋を覚えるだけにして、難しい部分は「鑑賞」すると割り切ってしまった方がいいだろう。
 初段よりちょっと上の人は、ここで挙げられている題材を見ながら、「切らせて勝つ快感」を覚えて下さい。切らせて勝つ快感を覚えてきたら、どうぞ3二金戦法の世界へ……(<違う)。

 かように面妖な本なので、ちょっと購入するのは勇気がいると思う。まずはいったん中を確かめて、後悔しないと確信したら買うといいだろう。

(2006.9.2 記)

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 いまさら聞けない将棋Q&A
著者名畠山 成幸/著

級位者☆☆☆☆
出版社名創元社 初段〜3段☆☆☆☆
発行年月/価格2006.7/1,260円 4段以上☆☆☆
感想

 FAQ形式で進む将棋指南書。「この局面でこんな風に潰されてしまいました。どう指せばよかったんでしょうか?」といった感じである。
 質問は全部で102。序盤中盤終盤、戦形を問わずいろいろ出てくる。

 発想としては面白いと思うし、創元社の購読層にも合っていると思う。
 ただ、もう少し範囲を絞ってもよかったのではないか……とも思う。例えば棒銀対策の場合、その質問の対象棋力はさして高くないだろう。そういう人達を相手に見開きの2ページで解説するというのは無理がある。「盤駒を出せ」なんて言葉で終わりにしてはいけない。

 質問を半分の50に絞って、図面も文字ももう少し小さくして、一つ一つの回答をもう少しだけ詳しくする。これだけで、随分と構成はスッキリする。
「対象棋力が低いから、読む気力を奪わないために見開きで簡潔に解説する」というのは、正しいようで実は間違いだと白砂は思う。対象棋力が低いほど、懇切丁寧に図面をたくさん用意してやらなければいけないのだ。何を書いてあるか判らないから盤駒を出して並べます、なんていうのは、上から目線で見てしまう幻想なのだ。

 断っておくが、内容そのものが悪いわけでは決してない。
 ただ、ページの都合上図面入んなかったんだろうな、変化書けなかったんだろうな、という場面があまりにも多いと感じたので、それだったら最初から思い切って見開きから離れたほうがよかったのでは……と思っただけである。もっとも、この辺は書いている当人が一番感じていることかもしれないので、こういう指摘はヤボなのかもしれないが。

(2006.9.2 記)

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 ひらめき次の一手 初段編
著者名山崎 隆之/監修 週刊将棋/編

級位者
出版社名毎日コミュニケーションズ 初段〜3段
発行年月/価格2006.7/1,050円 4段以上
感想

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 羽生善治 夢と、自信と。〜将棋七冠への奇跡とその後〜
著者名椎名 龍一/著

級位者
出版社名学習研究社 初段〜3段
発行年月/価格2006.8/1,260円 4段以上
感想

 

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 ゆめまぼろし百番
著者名駒場 和男/著

級位者☆☆
出版社名毎日コミュニケーションズ 初段〜3段☆☆☆☆
発行年月/価格2006.6/3,990円 4段以上☆☆☆☆
感想

「宗看をも凌ぐ難解作を作る(by.竹本健治)」と言われる、昭和を代表する詰将棋作家駒場和男氏の待望の作品集。出る出ると聞いてから随分と待たされました(笑)。

 内容はもう読んでいただくより他ありません、としか言いようがない。氏の数々の代表作が次々と出てくる。加えて氏の作品は、本手順だけではなく変化紛れ全てを並べて初めて味わえる作品が多いので、一読しただけではその真価は判らない。とりあえず解説を読んではみたものの、これからじっくりと楽しませていただきます。

 全くの偶然なのだが、実は、ふいに欲求が湧き上がり、5月に横浜市立図書館で『近代将棋』の「詰将棋トライアスロン」をコピーしてきたところだった(まぁ、真の目的は三宅正蔵の必死講座だったのだが)。あの連載も非常に面白かったので、できればこちらも単行本化して欲しいところだ。

(2006.7.8 記)

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 羽生の法則 Volume5 玉の囲い方
著者名羽生 善治/著

級位者☆☆☆☆
出版社名日本将棋連盟 初段〜3段☆☆
発行年月/価格2006.6/1,365円 4段以上
感想

 今までの4冊は「駒の手筋」を解説した本だったが、今度はもっと大きな視点で見た、今までのシリーズとは違う中級者向けの本ができた。
 タイトル通り、玉の囲い方についてカタログ的に解説している。

「振り飛車」「矢倉」「相居飛車」といった具合に大まかに戦法を分けて、そこで出てくる囲いについて紹介している。
 解説されているのは「囲いができるまで」で、囲った後の攻め筋や囲いの攻略法などは載っていない。思いっきり身も蓋もない言い方をすると、序盤だけが延々と続く本だ。そういう意味では「退屈な本」と思われてしまうかもしれない。

 しかし。
『将棋世界2006.8』の勝又講座のように、プロでは序盤の数手にも気を使っている。
 本書は、形をカタログ的に駆け足で紹介することによって、「こういう形になると、このあとはこういう囲いになるんだよ」という未来図をいくつも示してくれる。これは、前述の講座ほど細やかで専門的ではないが、序盤の駒運びというものに目を向ける効果がある。雑になりがち、自分のことばかり考えがちな初級者中級者にとって、「相手がこうやってくるならこっちはこうしよう」という将棋の面白さに気づかせてくれるという点で、本書は立派に役に立つだろう。

(2006.7.8 記)

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 羽生善治の終盤術3 堅さをくずす本
著者名羽生 善治/著

級位者☆☆
出版社名浅川書房 初段〜3段☆☆☆☆
発行年月/価格2006.6/1,365円 4段以上☆☆☆☆
感想

 かなり高度な内容を実は解説しているこのシリーズ。第3弾は「囲い」にスポットを当て、その崩し方を解説している。

 登場するのは美濃・矢倉・穴熊の3種。
 囲い崩しだったら対振り飛車の舟囲いはないの? と思ったが、冷静に書名を見てみれば『堅さをくずす本』だった。舟囲いは固さよりは広さを主張する囲いだ。

 内容としては、まずはじめに一般的な囲い崩しの「形」を解説し、次に実戦譜で具体的な手順を解説する。次の一手形式で延々続く形式なので、図面はかなり多い。

 ただ、どうも不満というか、事前の触れ込みとの落差のようなものを感じてしまった。こちらが勝手に感じてしまったものなので酷な話ではあるのだが。
 最初、本書は「どういう形であればどういう囲い崩しの手筋が利用できるか」というテキスト(講座)的なものだと思っていたのである。この形はこの金と龍の位置関係に注目、この場合はこういう手筋が利きます、とか、この場合はここに後手の利きがあるため、手筋1は使えません、とか。
 それも基本的な囲い崩しだよ、と言われてしまえばそれまでなのだが(<そうなのか)、むしろこれは「囲い崩しの応用」だと思う。で、本書は、その応用のメカニズムを解明した画期的なものだと思ってしまっていたのだ。

 もっとも、本書の形式が白砂にはあまりなじまなかった、という方が根本的な問題で、そのために評価が低くなってしまっているのかもしれない。次の一手形式とはいえ、きちんと順序立てた例題が並んでいるので、体系的に学べると言えなくもない。
 また、扱われている手筋はよくあるものだが、プロの実戦で出てきた「王道の寄せ」である。その手触りを覚えることは、間違いなく棋力向上につながるだろう。

 結局のところ、題材自体は悪くない。あとは読者の腕次第、という感じの本だと思う。

(2006.7.8 記)

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 秘伝将棋無双
著者名湯川 博士/著 門脇 芳雄/監修

級位者☆☆☆
出版社名山海堂 初段〜3段☆☆☆
発行年月/価格2006.6/1,470円 4段以上☆☆
感想

 古今東西最も難しい作品集のため「詰むや詰まざるや」との異名を取った『将棋無双』。本書は、そこからいくつか問題をピックアップして、詰将棋の面白さに迫っている。

 全てが会話調で進んでいるので、読みやすいと取るかうざいと取るかは人それぞれ。個人的にはちょっとうざかった(笑)。というか、会話調にすることで読みやすくなるとっつきやすくなるというのはただの幻想にしか思えない。読んでいくとそれなりに楽ではあるのだが、それは間口を広げるのとは少し違う話だと思うので。間口を広げるというのは、読み始める前の「手に取ってもらう」段階に考えるべきことであって、そこでは会話調というのはかえって邪魔になってしまうのでは……と、まぁそんな話はいいやね。

 内容はさすがにきちんとしたもので、さすが『秘伝大道棋』を書いた著者だと納得した。
 ただ、問題数が少ないというのはちょっと……と思う。場合によっては上下巻にしてでもきっちり100問載せて欲しかった。そういうことを考えると、やっぱり会話調は無駄な文章が多くなるからなぁ……と最初の話に戻る(笑)。
 もっとも、これだけ詳しく、くどいくらいに図面を使って詰将棋を解説するというのはあまり例がないことなので、その意欲は買う。できれば、続編として残りの『無双』作品や、『将棋図巧』もお願いしたいところであるが、このクオリティのままでそこまでやると著者が過労で倒れてしまうかもしれないのであまり強くは言えない(笑)。

(2006.7.8 記)

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 ひらめき次の一手 中級編
著者名山崎 隆之/監修 週刊将棋/編

級位者
出版社名毎日コミュニケーションズ 初段〜3段
発行年月/価格2006.6/1,050円 4段以上
感想

 

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 ひらめき次の一手 初級編
著者名山崎 隆之/監修 週刊将棋/編

級位者
出版社名毎日コミュニケーションズ 初段〜3段
発行年月/価格2006.5/1,050円 4段以上
感想

 

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 振り飛車基本戦法
著者名高橋 道雄/著

級位者☆☆☆
出版社名創元社 初段〜3段☆☆☆
発行年月/価格2006.5/1,260円 4段以上
感想

 初級者中級者を対象にした、振り飛車入門書。

 内容は

  • 原始棒銀退治の四間飛車
  • 四間飛車vs4六歩戦法
  • 四間飛車vs4六銀戦法
  • 四間飛車vs左美濃
  • 三間飛車vs早仕掛け
  • ツノ銀中飛車
  • メリケン向かい飛車
 といったところ。

 最初の原始棒銀退治を載せたのはなかなか面白い試みだと思う。24の低級タブなどでは、こういう猪突猛進原始棒銀の使い手が結構いるらしいから、需要はありそうだ。惜しむらくは端攻めの変化が少し足りなかったことで、わざわざ言及しているのだから対抗策も書いて欲しかった。

 また、全体の特徴として、詰みまで解説するというのがある。
「定跡書は途中までで終わっちゃうからそこからの指し手が判らない」という声を拾ったものと推察するが、少し微妙だ。というのも、手順を見ると結構難しい詰み筋だったりするのである。原始棒銀に困る棋力の人に読ませる内容ではない。(白砂の想像が当たっていたと仮定しての話だが)気持ちは察するしその姿勢を評価はするけれども、ちょっと要らなかったかな、と思う。それよりは、変化のひとつふたつを増やした方が有益だっただろう。

 それぞれの手順については、対象棋力の問題もあるのでこれでいい。不満がある人は、「創元社定跡」だと思って諦めよう(笑)。

(2006.7.8 記)

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 下町流三間飛車 居飛穴攻略の新研究
著者名小倉 久史/著

級位者☆☆☆
出版社名毎日コミュニケーションズ 初段〜3段☆☆☆☆
発行年月/価格2006.4/1,449円 4段以上☆☆☆
感想

 三間飛車による居飛車穴熊退治を題材にした、著者の処女作。いくつか共著はあったと思うが、単独ってのは記憶が正しければなかったと思う。あったらごめんなさい。(追記:向かい飛車の本がありましたね。失礼しました)

 玉頭銀や▲7八金型石田流などの珍しい形も扱っているので、三間飛車党は最低一度は目を通しておいた方がいいだろう。本書と中田功XPとを自在に組み合わせられるようになれば、居飛車穴熊は怖くなくなるはずだ。

 少し都合のいい変化が多い──というか、居飛車穴熊側の駒組み手順が安易という気がしなくもないが、実戦では生じやすい形ではあると思う。
 3段とか4段クラスであれば、攻めている形が多いので十分通用するだろう。ガンガン捌く三間飛車の醍醐味を感じて欲しい

(2006.7.8 記)

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 羽生善治の終盤術2 基本だけでここまで出来る
著者名羽生 善治/著

級位者☆☆☆
出版社名浅川書房 初段〜3段☆☆☆☆☆
発行年月/価格2006.4/1,365円 4段以上☆☆☆☆☆
感想

 前作に続き、寄せについて書いた本。お得意の「本をひっくり返す」次の一手方式で書かれている。

 サブタイトルは「基本だけでここまで出来る」となっていて、取り上げられた形を見ても、なるほど基本的な手筋だけで構成されている。入門書で手筋を覚えても、実際に使いこなせなければ意味がないという好例だろう。
 同時に、羽生の「大山先生は手を読んでない。ホントに読んでないんですよ」という発言も思い出した。大局観と基本的な手筋が頭にあれば、手を読むことなどしなくてもツボに手が行くということだろう。事実、本書に載っている、堅そうな陣形、手がかりのなさそうな玉形が、あっという間に寄ってしまう。「公式は暗記するのが重要なのではなく、使いこなすことが重要」だということがよく判る。

 次の一手形式も効果的に機能していると思う。
 羽生が講座で壇上に立ち、大盤を動かしながら「これはこうやっていきます。……次の形、これはこう攻めれば潰れてますね」と解説しているようなスピード感が感じられる。次の一手形式の「ブツ切り感」がいい方に作用しているのだろう。

 ただ、その点から苦情を呈すると、個々の問題に関連がないのが逆に気になった。
 前述のたとえを使うなら、「これはこうやっていきます。……次の形、これはこう攻めれば潰れてますね」と言う時、通常は「先程と同じく……」とか、「この筋があるので前回の手順は使えず、代わりに……」とか、前後にはなんらかの関係性があるものだろう。そうやって体系的に学ぶことによって、よりいっそう理解が深まる。本書には、あまりそれが感じられなかった(ないわけではない。念のため)。
 そのため、本当に単に次の一手をいっぱい解くだけ……という雰囲気もなってしまいがちだ。
 題材の難易度など、非常にうまくできていると思うので、もったいないと感じた。

(2006.7.8 記)

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 泣き虫しょったんの奇跡
著者名瀬川 晶司/著

級位者☆☆☆☆
出版社名講談社 初段〜3段☆☆☆☆
発行年月/価格2006.4/1,575円 4段以上☆☆☆☆
感想

 将棋界はもとより世間に一大旋風を巻き起こした(というと大袈裟か)瀬川問題。これを自伝の形で綴った本。
 自伝の部分にかなりの筆が割かれているので、「瀬川問題」の本とは言い辛い。少なくとも、読後感はそこにはなかった。むしろ、厳しい奨励会の内幕や、将棋ファンの熱い想いを感じるための本だろう。
 おいおいゴーストかい、と思えるほど端正で読みやすい文章だった。途中で投げ出す、ということはないと保証するので、将棋ファンであればぜひ一度手にとって読んでみて欲しい。

 本書に登場する渡辺健弥や遠藤正樹という名前は、白砂にとってもかなり懐かしい名前である。いや、覚えている苗字と一致していたらの話なんだけども。大学当時、遠藤や出戸、渡辺ケンヤというのは、学生強豪で名を轟かせていた。当時の白砂はレギュラーが取れるほど強くはなく対戦すらしていないのだが、噂には聞いていた。中学生からこんな強かったんじゃ、そりゃ強いに決まってるよなぁ(<日本語がヘン(笑))。

 将棋に対する情熱を非常に感じた。「将棋倦怠期」に入っている人(笑)などは、本書を読めばまた熱い想いが復活するかもしれない。

(2006.7.8 記)

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 5手詰ハンドブック 2
著者名浦野 真彦/著

級位者☆☆☆☆☆
出版社名日本将棋連盟 初段〜3段☆☆☆☆☆
発行年月/価格2006.4/1,050円 4段以上☆☆
感想

 好評だった『5手詰ハンドブック』の第2弾。『3手詰ハンドブック』も加えると第3弾になる詰将棋本。
 今回は装丁が緑。前回が赤、3手詰は黄色だった。次はどーする?(笑)

 内容は書名の通り5手詰だけを扱ったもので、今回も200問ある。
 問題も相変わらずうまい具合の難易度で、慣れていない人には難しく慣れた人はスラスラ解ける感じだ。当たり前のように感じるかもしれないが、このさじ加減って意外と難しいと思う。
 5手詰をいっぱい、ともなると、どうしても3手詰+2手、みたいな詰将棋が出てくる。その逆算の仕方がうまいのだろう。自然な感じで大駒捨てを入れたり、形をまとめたりしている。

『3手詰ハンドブック』はもう卒業、という人には薦めたい一冊。前作が手ごわいようなら、こちらよりは『3・5・7手実戦型詰将棋』の方を推したい

(2006.3.31 記)

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 奇跡の一手 サラリーマン・瀬川晶司が将棋界に架けた夢の橋
著者名上地 隆蔵/著

級位者☆☆
出版社名毎日コミュニケーションズ 初段〜3段☆☆
発行年月/価格2006.3/1,449円 4段以上
感想

 いっぱい出た「瀬川本」のうちの一冊。元奨励会員であり、『週刊将棋』の編集者でもある著者が書いた「瀬川事件」の顛末である。

 内容としては周知のものであり、さほど目新しいものはなかったと思う。なにしろ瀬川本はほとんど同時に読んだもので(笑)、どうも印象が薄いのだ。
『瀬川晶司はなぜプロ棋士になれたのか』は、純粋に外からの目で書かれたもののように見えるし、『棋士瀬川晶司』は内部の人間がまとめた本だ。本書は、図面や棋譜を一切使わないことで将棋を知らない人間に配慮しつつ、内部から優しい視線をもって書かれた本だと思う。

 正直、わざわざ蔵書に加える本だとは思わない。将棋のことと将棋界のこととはイコールではない、と考えているので。瀬川事件があったことは知っていていいだろうが、そのために本を手元に置いていつでも振り返るようにしておく必要は感じない。
 もちろん、将棋界も好きな人であれば、是非とも揃えておいた方がいい一冊だ。

(2006.3.31 記)

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 3・5・7手実戦型詰将棋
著者名飯野 健二/著

級位者☆☆☆☆☆
出版社名池田書店 初段〜3段☆☆☆☆
発行年月/価格2006.3/998円 4段以上
感想

 奨励会幹事をしていたこともあり、普及に熱心な著者が書いた詰将棋本。
 3手詰を60問、5手詰を60問、7手詰を40問、計160問の詰将棋が掲載されている。

 非常に易しかった。
 詰将棋が苦手な人向けと言えるかもしれない。一応7手詰まで入っているので、詰将棋慣れしてからもそこそこ楽しめると思う。そういう意味ではコストパフォーマンスはかなり高いのではないだろうか。

 詰将棋ではなく詰め将棋、を地で行く感じで、それをどう感じるかによって評価が分かれる本だろう。個人的にはその姿勢は評価する。
 ただ、ちょっと装丁が「ダサい」感じがした。ページ周りのグレーの使い方とか、駒のフォントとか、ちょっとしたこと少しずつがなんとなくしっくりこない。長くは眺めていられない気がする。もちろん、これは個人差がある話なので実際に手にとって確かめてほしい。

 本書がスラスラ解けるようなら、『5手詰ハンドブック2』に手を出し、最後に『詰将棋実戦形パラダイス2』に手を伸ばす。読んでいくなら、こんな順序だろうか。

(2006.3.31 記)

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 将棋定跡最先端 振り飛車編
著者名所司 和晴/著

級位者☆☆
出版社名毎日コミュニケーションズ 初段〜3段☆☆☆☆
発行年月/価格2006.3/1,449円 4段以上☆☆☆☆☆
感想

 以前「居飛車編」を出版していたが、今度は「振り飛車編」。
「最先端」、という言葉通り、最先端の変化が盛り込まれている。

 四間飛車、中飛車、三間飛車、向かい飛車、相振り飛車のそれぞれについて、形を絞って深く解説している。
 網羅的にというわけにはいかないが、そのかわり掲載されている形については十分なページが割かれているわけだ。これはこれでなかなか潔い選択だろう。

 四間飛車▲4六銀戦法やXP、ゴキゲン中飛車▲3六銀型など、「知りたいがあまり解説されていない戦形」を取り上げているのがいい。後手向かい飛車△3三角は『島ノート』で「鬼殺し向かい飛車」として紹介されていた形だが、これを深く掘り下げた本というのも珍しいだろう。
 反面、相振り飛車などはよくある形をさらりと紹介するだけにとどまっているなど、多少ボリュームにばらつきがある感じもした。『東大将棋』シリーズで相振り飛車は紹介されていなかったという事情もあるし仕方がないのだが、その辺もう少しなんとかならなかったものか。なんだったら相振り編はなし、でもよかった気がする。

 個人的には結構ツボだった。これは素直に評価したい。

(2006.3.31 記)

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 瀬川晶司はなぜプロ棋士になれたのか
著者名古田 靖/著

級位者☆☆
出版社名河出書房新社 初段〜3段
発行年月/価格2006.3/1,575円 4段以上
感想

 全く外部の目から見た瀬川事件の本、という感じ。正直、最初の感想は「誰こいつ?」というものだった(笑)。プロフィールや著書を見る限り、いわゆるルポライターとかに分類されるのだろうか。

 非常に事件ライクというか無味乾燥というか(←褒めてます)、よくあるビジネス本と同じような文体、体裁である。最初にドラマチックな場面を描写して、いったん最初に遡ってから時系列を辿るといった手法はよく見る。図書館に行けば336あたりに山と置いてある(という表現をして果たしてどれだけの人が判るのか大いに疑問だ(笑))。
 そのため、将棋を知らない人が読むのには適していると思う。白砂なんかは逆にちょっと「どぎつい」印象が強くてダメだった。『Number』の記事のような浸り具合、といってしまうとかえって判りづらくなるか……。

 かなり取材をしていることは確かなので、将棋界マニアの方は一度目を通すことをお勧めする。

(2006.3.31 記)

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 詰めと必至ハンドブック
著者名内藤 國雄/著

級位者☆☆☆☆
出版社名日本将棋連盟 初段〜3段☆☆☆☆☆
発行年月/価格2006.3/1,155円 4段以上☆☆☆☆
感想

 初級者から中級者向けくらいを対象にした、易しい必死集。
 簡単な1手必死120問と、少し難しい1手必死30問とからなる。

 終盤を鍛えるなら詰将棋より必死の方が実践的で、というか必死はその中に詰将棋を内包しているため、読みの長さが少し多く必要になる。そのため、たった1手の必死とはいえ、詰将棋に直すと5手とか7手分を読むことになる。読みの訓練になるのも納得というものだ。
 本書では、前段として詰みの形について解説し、どの持ち駒があれば詰むかという練習問題でウォーミングアップする。それから1手必死に入っていくので、徐々に読み筋が深まっていくのだがあまり気にならない。

 問題数、問題の質ともに、初段以下の人には最適だと思う。

 こういう良質な必死本を読むと、必死と詰将棋を合わせた本というのも欲しくなってくる。
 問題が提示されるが、詰むかどうかが判らない。詰ますか必死をかけるかという選択も同時に迫られる。応用問題として、詰みも必死もかからないのでいったん受けに回るとか、2手スキをかけて勝ちとか、そういう問題がところどころに入っているとなおいい。
 浅川書房あたりで一つよろしく(笑)。

(2006.7.8 記)

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 清水市代の将棋トレーニング
著者名清水市代/著

級位者☆☆☆☆☆
出版社名日本放送出版協会 初段〜3段☆☆☆☆☆
発行年月/価格2006.2/1,050円 4段以上
感想

 NHK将棋講座の内容をまとめた本。本には「加筆修正」と書いてあった気がするが、NHKの録画時間は10:23〜12:00までとしている(こうするとちょうど指し初めから録画される)ので、真偽のほどは判らない。

 一読して、かなりいいんじゃないかと思った。
 中盤の手筋や寄せの局面を抽出して、手筋を紹介するというまぁありふれた本ではあるのだが、それなりにきっちりとまとまっている。もう少し強くなるためのステップアップコラムのようなものも用意されていて、初級者が中級者になるにはちょうどいい難易度になっていると思う。

 確か昔の『近代将棋』だったと思うのだが、「上達法はなにか?」という記事があり、そこで「▲7六歩より頭金」と結論されていた。小難しい序盤よりは、詰める詰められるというスリリングな終盤を体験する方が上達の早道である、ということだ。そのとき、著者も同様のことを言っていたように記憶する。
 本書は、そんな著者の哲学にピッタリ沿った内容になっている。入門書としては申し分ない。

(2006.3.31 記)

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 将棋八大棋戦秘話
著者名田辺 忠幸/著

級位者
出版社名河出書房新社 初段〜3段
発行年月/価格2006.2/1,995円 4段以上
感想

 

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 詰将棋実戦形パラダイス2
著者名詰将棋パラダイス 週刊将棋/編

級位者☆☆
出版社名毎日コミュニケーションズ 初段〜3段☆☆☆☆
発行年月/価格2006.2/1,050円 4段以上☆☆☆☆
感想

『詰将棋パラダイス』に掲載された3〜15手詰の実戦形を集めた本。内訳は、3〜7手詰が40問、9〜11手詰が55問、13〜15手詰が10問となっている。

 とはいえ、3手詰は数えるほどしかないし、13手以上は問題数が少ないということで、実際は7〜11手詰の本と考えるのがいいだろう。
 実戦形ということで、詰パラ特有の「変な問題」はない。
 ただし、結構骨のある問題が多いので、スラスラ解いていく……というわけにはいかないと思う。
「てごわい詰将棋」という、あまりない領域の貴重な本だろう。

(2006.3.31 記)

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 竜王決定七番勝負 激闘譜 第18期
著者名読売新聞社/編

級位者
出版社名読売新聞東京本社 初段〜3段
発行年月/価格2006.2/1,785円 4段以上
感想

 

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 棋士瀬川晶司 61年ぶりのプロ棋士編入試験に合格した男 サラリーマンの挑戦!
著者名日本将棋連盟書籍/編

級位者☆☆
出版社名日本将棋連盟 初段〜3段☆☆
発行年月/価格2006.1/1,680円 4段以上☆☆
感想

 日本将棋連盟発行の言わば「瀬川事件公式ブック」。
 身内が出版しただけのことはあって、米長会長や発起人? の一人である野月、理事の森下といった面々が寄稿している。また、『将棋世界』の観戦記をまとめたものや、過去29局の実戦解説など、将棋を知っている人へ向けての瀬川本であることが見てとれる。
 本人のインタビューなどもあるし、数ある瀬川本のうちどれを買うかとなれば、白砂は迷わず本書を推す。

 まぁ、買う必要があるかと訊かれるとあれなのだが……(笑)。

(2006.3.31 記)

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 これなら実力初段 読みの感覚・次の一手
著者名武者野勝巳/著

級位者☆☆☆☆
出版社名毎日コミュニケーションズ 初段〜3段☆☆☆☆
発行年月/価格2006.1/1,050円 4段以上☆☆
感想

 次の一手を集めた本。毎コミ文庫の一冊である。

 本の厚さを見れば判るが、なかなかにボリュームがある。問題数も多いし、序盤中盤終盤とまんべんなく載っている。

 本書のウリと思われる「モニター方式」とやらについては、さっぱり判らなかった。
 というか、それに実効性があるかどうかが疑問なのだ。
 いろんな傾向の問題を解いて総合的に棋力を測る、ということなのだろうが、そんなことは別に珍しくもなんともないし、問題なのはそもそも次の一手を解答することでどれだけ本当の棋力が判明するかで、そんな小手先の部分の統計は無意味(とまで言っちゃうと極端だが)だと思う。

 とはいえ、これだけの問題量だ。一つ一つの問題も結構面白い。初段くらいまでの人なら一度は読んでみるのもいいかもしれない。
 有段者は常識の範疇だろうから、そんなに役に立たないと思う。

(2006.3.31 記)

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 将棋定跡最先端 居飛車編
著者名所司 和晴/著

級位者☆☆
出版社名毎日コミュニケーションズ 初段〜3段☆☆☆☆
発行年月/価格2005.12/1,449円 4段以上☆☆☆☆
感想

 定跡伝道師の居飛車定跡解説本。
 ということで当然のように『東大将棋シリーズ 居飛車編』の続編かと期待してしまうが、矢倉、横歩取り、角換わり、相掛かりを一冊でまとめてある。
 もう少し詳しく説明すると、

  • 矢倉……4六銀戦法
  • 横歩取り……8五飛戦法、相横歩取り
  • 角換わり……早繰り銀、腰掛け銀、先手棒銀
  • 相掛かり……3六銀戦法
 というラインナップである。
『東大将棋シリーズ』の中で結論が変わった部分を中心に構成されている。また、角換わりや相掛かりはこないだまでやっていた『週刊将棋』の連載をまとめたものだろう。
 大げさに悪く言うと過去の東大将棋の補足本なのだが、それはそれとして親切なことだと思う。紙媒体は一度できあがってしまうとなかなか修正ができないが、こうやってきちんとフォローしてくれるだけでも十分にありがたい。

 ただ、その分、角換わりや相掛かりについてのページか中途半端になってしまった感じだ。矢倉・横歩取りの修正分だけで本は出せないだろうということでこれらの項もまとめて出版したのだろうが、それがかえって悪い方に出ている。特に3六銀戦法は類書もまだ多くないだけに、「定跡伝道師」への期待は大きかったはずだ(白砂はあんま期待してないんだけどね(笑))。
 それでも、最新の内容を追っていることには違いなく、居飛車党ならば目を通しておいて損はないだろう。
 概説、と言えるほど網羅的ではないし簡単ではないので、級位者は手を出さない方が無難だと思う。もっといい本はある。

(2006.1.8 記)

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 居飛車基本戦法
著者名高橋 道雄/著

級位者
出版社名創元社 初段〜3段
発行年月/価格2006.1/1,260円 4段以上
感想

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 親子でたのしむ将棋入門
著者名将棋を楽しむ会/編

級位者
出版社名土屋書店 初段〜3段
発行年月/価格2005.12/1,050円 4段以上
感想

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 新・振り飛車党宣言! 2
著者名千葉幸生 横山泰明 佐藤和俊/著

級位者☆☆
出版社名毎日コミュニケーションズ 初段〜3段☆☆☆☆
発行年月/価格2005.12/1,365円 4段以上☆☆☆☆☆
感想

 新シリーズの第2作目。イキのいい若手が振り飛車の解説をするという体裁は今回も同じである。

 講座の内容は、

  • 居飛車穴熊松尾流に対して中飛車で牽制(△4四銀型も少し)。先後両方
  • 先手藤井システム▲1六歩止め▲4六歩型
  • ▲4七銀vsゴキゲン中飛車
  • 後手三間飛車急戦
  • 居飛車穴熊vs△3二金型三間飛車
 名前は白砂が勝手につけているが、目次をそのまま転記するよりは判りやすいと思う。

 居飛車穴熊に中飛車で対抗というのは、ミレニアム対策にも通じる指し方で、対ミレニアムとしては藤井本があった。陣形はあれとほぼ同じである。非常に綱渡り感が強いが、ギリギリのところを通していかないといけないくらい松尾流が優秀ということなのだろう。新人王戦で結果が出せたら本書に花を添えられたのだが、そこがちょっと残念だった(笑)。
 ▲1六歩型の藤井システムは、端の一手を▲4六歩に回して、早めに攻めようという形だ。端攻めはないが、もともと▲4五歩から攻めるのが本流でもあるし、ということなのだろう。これで潰せたら対穴熊は楽勝だよなぁ……などとちょっと疑いの目で見ているのだがどうだろうか? この辺りは実際に自分で確かめて欲しい。
 ゴキゲン中飛車と三間飛車急戦は、なんかどこかで見たような解説で、そんなに新味はなかった。特に三間飛車は、コーヤン流とか加藤本などでフォローが利く内容だと思う。
 最後の△3二金型石田流は、立石流とか7七桂戦法の形に組んで、早めに居飛車穴熊にプレッシャーをかけよう、という指し方。ちょっとアマチュアチックで(笑)、これはこれで面白い指し方だ。ただ、穴熊側がそこまでじっとしてるかという点は非常に気になる。これは穴熊党側の評価を聞いてみたい。

 巻末の棋譜に解説をつけたり、次の一手を掲載譜とは違う形から取ったりと、前著に加えていろいろ工夫している。その努力は買いたい。「振り飛車」という大きいくくりのため少しバラ売り感はあるが、それは仕方がないだろう。
 基本定跡を押さえている有段者であれば、買って損はないと思う。

(2006.1.8 記)

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 図解将棋入門
著者名坂口 允彦/著

級位者
出版社名土屋書店 初段〜3段
発行年月/価格2005.12/1,050円 4段以上
感想

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 羽生善治の終盤術1 攻めをつなぐ本
著者名羽生 善治/著

級位者☆☆☆
出版社名浅川書房 初段〜3段☆☆☆☆☆
発行年月/価格2005.12/1,365円 4段以上☆☆☆☆☆
感想

 浅川書房がついに動いた。羽生を担ぎ出しての大局観解説本である。
 シリーズ第一巻は「攻めをつなぐ本」。主に中盤戦たけなわの局面から最終盤までの局面について、考え方や指し手の方向性について解説している。

 ただ、実際の体裁は「解説」ではなく、次の一手の出題という形になっている。『読みの技法』系の体裁を期待していた白砂はちょっと拍子抜けだった。実際、一通り読んでみた感想としても、「これちょっと……」だった。
 ちょっと、の原因は単純なことで、解説の量と解説の質が一致していない。一言で言うと「解説が少なくてわかりづらい」。非常に高度な解説をしているので、次の一手の回答としての解説量だと少なすぎるのだ。
 また、一局を数問に分けて出題している。そのため、その局の最後の方の問題では「読む手数」が少なくてすむが、最初の方では成算が持てる局面に持っていくまでの読む手数はかなり長くなる(ややこしい表現で申し訳ない)。まえがきには「7手詰めが読める程度の棋力があれば……」とあるが、上記の理由により、それはちょっと疑問だと思う。

 まぁごちゃごちゃと書いたが、要は「せっかく高度なことを書いているのだから、それに見合う編集形式である講義形式にしてほしかった。次の一手形式ではその効果が半減する」ということである。

 ……ところが。

 騙されたと思って、もう一度読み返してみて欲しい。
 できれば一読した後すぐがいい。「答えを知っている」状態でもう一度読むのだ。

 するとあら不思議(笑)。次の一手形式だった体裁が、図面を豊富に使った解説本へと一変しているではないか。
 要するに、「次の一手として問題を考える」→「答えを見る」→「解説を読む」というステップが、非常に「疲れる」ものだったのだ。答えを考えるという思考と、解説を読んで理解し吸収するという思考とは違うということなのだろう。再読した場合は、純粋に解説だけに集中して読めるために、思考の流れというかパターンが一つで済むために疲れず、非常に判りやすく読める。
 実際のところ、これは単純に白砂の棋力では理解しづらいほど高度なことをやっているだけかもしれないのだが(笑)、とりあえず白砂の場合はそうだった。そういう読み方をすると、図面一つ一つに解説が入り、手の流れを説明して最後に理論を総括するという実に丁寧な解説本として読める。

 この読み方が正しい、と言うつもりはないが、「一読してもよく判らん」と思った方はぜひとも試してみて欲しい。きっと効果はある。本書で説いているものを吸収できないのはもったいない。
 もちろん、それでも難しいと感じることもあると思う。しかしそれは仕方がない。それだけかなり難しいことを説明しようとしている本なのだ。本書は。

(2006.1.8 記)

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 フィードバック方式定跡次の一手
著者名深浦 康市/監修

級位者☆☆☆☆☆
出版社名日本将棋連盟 初段〜3段☆☆☆☆
発行年月/価格2005.12/1,575円 4段以上
感想

 基本とも言える定跡について、次の一手形式で覚える本。

「フィードバック」とはなんぞや? と思ったが、要は問題が2段階になっているもののようだ。
 本問題が判らなかった場合はその下にある類似問題(これらの呼び方は白砂のオリジナルです)を解く。類似問題の方は狙いが明確というかあからさまになっているので、それがヒントになるでしょう、というわけだ。
 なかなか面白い試みだが、クオリティを維持するのは難しいようで、いくつか「答えの符号が一緒なだけじゃないのかこれ」という問題もあったように思う。まぁ「目がそこに行けばいい」からいいのかな(笑)

 内容は定跡というより常識に近いものも含まれている。類似問題は特に簡単に作っているので、初級者から中級者になろうか、というくらいの人はかなり役立つだろう。
 上限は初段くらいまで。そこから先はもう「常識」なので、本書を読む時間があったら別の本を読む方に時間を割こう。

(2006.1.11 記)

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 森信雄の勝ちにいく!詰将棋ドリル2
著者名森 信雄/著

級位者
出版社名山海堂 初段〜3段
発行年月/価格2006.1/1,260円 4段以上
感想

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 ラクラク詰将棋 基本手筋集2
著者名日本将棋連盟書籍/編

級位者
出版社名日本将棋連盟 初段〜3段
発行年月/価格2005.12/1,050円 4段以上
感想

 3、5、7手の詰将棋を集めた本。
 非常に簡単な問題を選んだ感があり、詰将棋アレルギーの人にはお勧め。

 例によってタイムトライアルで解いていったのだが(本屋さんホントにごめんなさい)、ほとんど渋滞することがなかったので30分くらいしかからなかったと思う。
 だいたいこういう類の本は、3手詰5手詰あたりだと線駒を使った「ややこしい詰め方」が多いものだ。短手数の手筋は限られているから仕方がないといえばそうなのだが、それでも類書ほどは多くない。また、後半の5手7手、特に7手詰は端正な作品が多かったので、その点でも早く解けた。

 以前5手詰ハンドブックのところでもタイムを記したが、その時間について「早すぎる」とか「俺は時間がかかった。才能がないのか」といった反応があったようだ。
 別のところでも書いたことなのだが、白砂は創作したりもする詰将棋ヲタなので、将棋の棋力以上に詰将棋は得意です。なので、ヲタ連中から見れば白砂のタイムは遅すぎるくらいなので恥ずかしい限りだし、白砂より時間がかかったからといって嘆くことはありません。安心してください(笑)。

(2006.1.11 記)

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 振り飛車党列伝
著者名湯川 博士/著

級位者☆☆☆☆
出版社名毎日コミュニケーションズ 初段〜3段☆☆☆☆
発行年月/価格2005.11/1,449円 4段以上☆☆☆☆
感想

『振り飛車ワールド』の1コーナーをまとめた本。

 白砂は『振り飛車ワールド』を全巻持っているのでなんの意味もない本なのだが、このインタビューは確かに「ゼニの取れる」内容だ。一冊にまとめて、広く読んでもらいたいという発想は間違っていないと思う。

 本書を読めば将棋が強くなる、というわけではないが、本書を読めば将棋が指したくなる、と、思う。多分(笑)。
 コピー将棋が多いだとか個性がないだとかいろいろ雑音も多いが、まだまだ個性的な棋士はたくさんいる。若手もベテランも含めて、登場したすべての棋士のファンになってしまいそうな、そんな「いい話」がいっぱい詰まっている。

(2006.1.8 記)

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 阿部隆の大局観・良い手悪い手普通の手
著者名阿部 隆/著

級位者☆☆☆☆☆
出版社名毎日コミュニケーションズ 初段〜3段☆☆☆☆☆
発行年月/価格2005.11/1,365円 4段以上☆☆
感想

 NHK将棋講座の内容をまとめた本。
 なぜか知らないが、毎コミからの出版となっている。ひょっとすると若干内容が増えたりしているのかもしれないが、目次にも「NHK将棋講座を元に……」とあったし、何回か見た講座の内容とは合致している。よく判らないのでこの辺は考えないことにしよう。

 内容は書名通り「大局観を養う本」になっている。
 3択形式で出題し、その手がなぜいいか、なぜ悪いかを解説する。また、ところどころに「ポイント」という項が設けられていて、重要なポイントを解説してくれる。

 著者が居飛車党のため、対抗形はすべて居飛車の立場で書かれているし、相居飛車はあるが相振り飛車はない。矢倉も3七銀戦法と脇システム(!)、横歩取りは8五飛戦法と、講師の立場に立って書かれたものであることが判る。大局観を養うという点ではすべての層の人に読んで欲しいが、振り飛車党が読んでも鬱になるだけかもしれない(笑)。
 この辺りはこの手の本で問題となるところで、例えば居飛車党の大局観と振り飛車党の大局観は、微妙に、しかし根っこのところで完全にズレている。まぁだからこそ各種の戦法が存在しそれを得意にしている人がいるわけなのだが、では、居飛車党の立場に立って書かれた大局観の本が、振り飛車党の立場にどれだけ役に立つかというとこれまた微妙だ。

 もっとも、本書についてはそういう懸念はない。
 対象棋力がやや下に設定されているため、戦法の問題ではなくまずは正しい大局観の捉え方考え方を見につけましょう、という内容になっているからだ。
 対象棋力は高く見積もっても3段まで、一般には、初段くらいが対象だと思われる。
 それ以上の棋力の人は、本書はあまり必要がない。題材も最新形ではないし、本書で書かれていることは有段者ならすでに身につけていなければならないことだろう。  逆に、定跡書を何冊も読んでるのに勝てない、という級位者の人は、まずは立ち読みで最初だけでも読んでみて欲しい。おそらく何か得るものがあるはずだ。

 中級者向けの非常にいい本だと思うのだが、一つだけ苦言を呈したい。
「ポイント」を出してくれるのはいいのだが、その「ポイント」という表示が非常に目立たない。せっかくのポイントなのだから、もう少し太字で書くとか(一応太字にはなっている)、背景をグレーにするとか、もう少し工夫をして欲しかった。
 これもとりあえず店頭で確認してみて欲しい。せっかくのポイント表示が、かえってキツキツのレイアウトを際立たせてしまっている。じゃあどうすりゃいいんだよというと(文字数の問題もあって)難しい問題なのだが、本書の対象棋力くらいの人に対しては「読みやすく読ませる」工夫も必要だろう。

(2006.1.8 記)

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 将棋界の事件簿
著者名田丸 昇/著

級位者
出版社名毎日コミュニケーションズ 初段〜3段
発行年月/価格2005.11/1,449円 4段以上
感想

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 初段の〈実戦〉詰将棋150題 強くなる!
著者名森内 俊之/監修

級位者
出版社名成美堂出版 初段〜3段
発行年月/価格2005.11/777円 4段以上
感想

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 新・振り飛車党宣言! 1
著者名佐々木 慎・藤倉 勇樹・中村 亮介/共著

級位者☆☆☆
出版社名毎日コミュニケーションズ 初段〜3段☆☆☆☆
発行年月/価格2005.9/1,365円 4段以上☆☆☆☆☆
感想

 20世紀の頃(と書くとすごい昔に感じる(笑))、『振り飛車等宣言!』という本があった。若手が振り飛車の最新研究を披露するという試みで、個人的には実戦譜が多く研究が薄いのであんまりだったのだが、それでもなかなか好評だったと思う。
 今回は「21世紀の若手」とも言うべき面々が、最新研究を披露してくれている。

 内容は昔のままで、一人ずつ2本の講座、自戦記、次の一手、実戦譜という構成。
 今回の講座は、

  • △6四銀、△5三銀左の急戦(▲4六歩と突いている形=▲4六角の反撃がない分居飛車が得)
  • 藤井システムっぽい形からの居飛車穴熊、ミレニアム対策
  • 居飛車穴熊(含松尾流)vs△4四銀型
 といったところ。
 急戦対策は必要だし、ミレニアム対策はあんまり棋書も多くないし、vs松尾流は渡辺本を超えてる部分もある(ちょっとだけ言うと、△4五飛▲2四飛に、△4九飛成としないで端を攻める。この手は渡辺本に載っていない)ので、四間飛車党であれば迷わず買い。居飛車党も、四間飛車側の手の内を知るという意味で読んでおいてもいいだろう。
 ただ、前シリーズを踏襲しているせいもあって、解説自体は少ないし、そもそも基本定跡は扱っていない。あくまでも基礎が判っている人が読む本になっている。そういうところを合わせて考えると、初段くらいまででは少し読みづらいかもしれない。

(2005.10.26 記)

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 すぐに使える将棋の手筋 下
著者名週刊将棋/編

級位者☆☆☆☆
出版社名毎日コミュニケーションズ 初段〜3段☆☆☆☆☆
発行年月/価格2005.9/1,365円 4段以上☆☆☆☆☆
感想

 上巻が少し前に出ていて、その下巻。駒ごとの手筋をまとめた本だ。
 執筆をしなければならない状態ならさておき、ただまとめるだけなのになんでわざわざ上下巻をこんな間隔開けて出したんだろう? と少し不思議に思った。いろいろあるんだろうねきっと。

 内容は前回と同じ。というわけで評価も上巻とまったく同じにした。
 上巻が読める人であればちょうどいいだろうし、上巻がダメなら下巻もダメである。

(2005.10.26 記)

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 二枚落ち裏定跡
著者名所司 和晴/著

級位者☆☆☆
出版社名日本将棋連盟 初段〜3段☆☆
発行年月/価格2005.9/1,365円 4段以上☆☆☆
感想

「定跡伝道師(ってぇキャッチフレーズもどうかと思うが……)」所司が出した2枚落ちの解説本。2歩突っ切りと銀多伝を紹介した後、5五歩止めや△6三銀の多伝殺し、△3二金△2二銀型といった上手の裏定跡を紹介している。

 個人的には最後の▲3六銀型が目新しい程度で、その他の裏定跡は『定跡なんかフッ飛ばせ』などで目にしたことがある。そんなに裏……という感じがしなかったのだが、白砂が定跡ヲタであることを考えると正しい感想かどうか自信がない(笑)。
 もっと言ってしまうと、それ以前に駒落ちを指す機会そのものがあまりないので、定跡ヲタ以外のどの層に購買層があるのかがよく判らない。

(2005.10.26 記)

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 久保利明のさばきの極意
著者名久保 利明/著

級位者☆☆☆☆
出版社名日本放送出版協会 初段〜3段☆☆☆☆
発行年月/価格2005.9/1,050円 4段以上☆☆☆
感想

 最近刊行を連発しているNHK将棋講座のひとつ。著者自身の実戦から、振り飛車の「さばき」を学ぼうという講座である。

 元々が15分の講座ということで、できることも限られてくる。そのため、詳しく変化をいろいろ解説する──というわけにはいかないが、その代わりさばきの「心得」がなんとなく身につくような構成になっている。創元社の鈴木大介本のようだ……というと両方から怒られそうだが(笑)、イメージとしてはそんな感じである。
 このシリーズ自体の装丁がどうも肌に合わないようで、白砂は少し読みづらさを感じた。この辺は以前にも書いた通りだ。白砂個人の問題であればいいのだが、ひょっとすると読みづらくなるなにかがあるのかもしれないので、できれば立ち読みで少し読んでみてほしい。杞憂に終われば全く問題ないので、その辺は各自の判断にお任せする。

 内容自体は講座でやったことでもあり、自戦記が載っているようなものなので、気軽に読めると思う。こういう説明が正しいのか判らないが、基礎体力をつけるというよりは精神力を鍛える本のように感じた。そういう「雰囲気」をうまいこと表現できているところは評価したい。

(2005.10.26 記)

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 終盤の鬼 森信雄の強くなる将棋
著者名森 信雄/著

級位者☆☆☆☆
出版社名山海堂 初段〜3段☆☆☆☆☆
発行年月/価格2005.8/1,260円 4段以上☆☆☆
感想

 次の一手形式で寄せの勉強をする本。

 最初にちょっとした解説ページがあり、そのあとはひたすら問題を解いて鍛えていく方式である。
 ちょっと面白いのが、問題のページにヒント図面があり、「▲○○○という手ではこうなったダメ」みたいなものが図入りで載っていること。こういう、最初に失敗図を示すという形式の問題集は初めて見た。
 要するに、問題形式にはなっていても、その実これは講義形式であり、だから問題を解くというよりはどんどん読み進んでしまっても構わないようになっている。一通り読む(図面を見る)ことによって、寄せの形や手順を叩き込むという本だ。

 問題自体はなかなか骨っぽいものも入っているが、上級になると逆に「スーパートリック(作者にちなんで言ってみました(笑))」っぽくなっていて寄せの教材という感じではなくなる。もう少しターゲットを絞って、実戦的な問題集(寄せ講義)としてまとめた方が本としては生きたのではないか……と思った。
 試みとしては悪くないので、『寄せが見える本』一歩手前の読者を対象とするくらいで続編を作ってほしい。

(2005.10.26 記)

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 実戦に役立つ詰将棋3手5手
著者名渡辺 明/監修 週刊将棋/編

級位者☆☆
出版社名毎日コミュニケーションズ 初段〜3段☆☆☆
発行年月/価格2005.8/1,050円 4段以上☆☆☆
感想

3手詰と5手詰だけを集めた本。『週刊将棋』の下の段にある「詰将棋入門」から持ってきている。

 結論から言うと、この本は初級者が読んでも「実戦に役立つ」ことはない
 一度でも『週刊将棋』の「詰将棋入門」を解いた人なら判ると思うが、この詰将棋、3手詰はかなり特殊な線駒の使い方をする。難易度で言ったら「詰パラ」などの方が数段上なのだが、一般の詰め将棋本に比べたらよっぽと「そっち寄り」の問題ばかりだ。そんなものを解いていったところで実戦には役に立たない。もちろん「解いたことによる棋力上昇」とは問題が別である。ここで言っているのはあくまでも「こんな詰み筋実戦じゃ出ねぇよ」という話だ。

 一方、3手詰の「凶悪さ」に比べると、5手詰の方はまだ素直に作ってある。
 なので、もし間違って(笑)買ってしまったり立ち読みした級位者の方がいたら、5手詰から解くことをお勧めする。
 5手詰で基本詰手筋と自信(笑)を養ってから、マニア向けの3手詰に挑戦すればいい。

 あと、巻頭の詰め手筋の解説は役に立つ。短いながらうまくまとめられており、仮に別の詰め将棋

(2005.10.26 記)

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 升田将棋の世界
著者名真部 一男/著

級位者
出版社名日本将棋連盟 初段〜3段
発行年月/価格2005.7/1,680円 4段以上
感想

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 角交換振り飛車
著者名畠山 成幸/著

級位者
出版社名創元社 初段〜3段
発行年月/価格2005.7/1,260円 4段以上
感想

 後手から角を交換して△4二飛とし、機を見て向かい飛車に振り直す、いわゆる「2手損四間飛車」を解説した本。
 サブタイトルのネットで流行の真偽は判らないが、白砂の記憶では『奇襲大全』に少し載っていた程度で類書はほとんどなく、初めての解説書といっても過言でないと思う。

『奇襲大全』では四間飛車穴熊穴熊型のみが解説されていたが、本書では高美濃型も紹介されている。また、角交換拒否のタイプも紹介されているので、とりあえず指してみるには十分な情報が揃っていると言える。

 個人的な事情を言うと、7七桂戦法の変化で似たような形になる(△6四歩型)ので、出版後すぐに買った。そして、すぐに「そうだこれは創元社だ……」と(笑)。
 指し初めには有効だが、指しこなすには本書だけではちょっとキツい。実戦で揉まれる必要があるだろう。

(2006.1.8 記)

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 先崎学の子ども将棋
著者名先崎 学/著

級位者
出版社名梧桐書院 初段〜3段
発行年月/価格2005.7/987円 4段以上
感想

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 四間飛車破り 居飛車穴熊編
著者名渡辺明/著

級位者☆☆☆☆
出版社名浅川書房 初段〜3段☆☆☆☆☆
発行年月/価格2005.6/1,470円 4段以上☆☆☆☆☆
感想

 渡辺竜王の四間飛車破りシリーズ第2弾。今度はイビアナ編である。
 著者自身、居飛車穴熊のスペシャリスト(現在のプロはほとんどそれしか指さないという話もあるが……)でもあり、期待の一冊だ。

 内容は、4枚穴熊(!)から始まって、振り飛車側の工夫により4枚穴熊が組めなくなったこと、そのため居飛車穴熊側は▲6六歩と止め、別の形を目指すことなど、まずは歴史の部分から入っている。
 続けて、優秀な松尾流穴熊を解説。この形に組むことが居飛車穴熊側の狙いだ。
 そして、松尾流に組もうとする居飛車穴熊側と、組ませまいとする振り飛車側の攻防が、最新形をまじえて紹介される。

 具体的な振り飛車側の対策として、本書では△4四銀型、△3二銀型、△5四銀型の3つを挙げ、それぞれの居飛車穴熊側の対抗策を解説している。
 著者自身がイビアナ使いということもあってか、結論としては若干居飛車穴熊有利となっている。もちろんこれは作ったウソ手順ではなく、実際のプロ将棋の現状がそうなのだろう。少し古い話だが、『振り飛車ワールド』の千葉解説などでも、松尾流に対する決定打はなかった。

 藤井がちょうど『四間飛車の急所』を書いていることもあり、実は重複するのではないかと心配していた(笑)。しかし、本書では藤井システムはほとんど語られなかった。うまく住み分けを考えたようだ(笑)。
 編集も丁寧で、非常に読みやすかった。章末の練習問題はいらないんじゃないか……とも思ったが、これは図面つきの目次と考えれば非常に便利に使える。

 浅川書房らしい名著だと思う。

(2005.7.17 記)

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 すぐに使える将棋の手筋 上
著者名週刊将棋/編

級位者☆☆☆☆
出版社名毎日コミュニケーションズ 初段〜3段☆☆☆☆☆
発行年月/価格2005.6/1,365円 4段以上☆☆☆☆☆
感想

 駒別に手筋を紹介する本。週刊将棋に連載されていた記事を編集しなおしたものだ。
 連載時には(図略)が多かったので、図面が入っただけでもありがたい(笑)。

 内容は意外と高度で、基礎的な部分は『羽生の法則』などに任せて応用に徹したということなのだろう。「よく見る手筋」というよりは、「意外な手筋」を集めた感じがする。そのため、白砂くらいの棋力でも十分に面白く読める。もちろん、話のマクラとして簡単な(すぐに気づきそうな)手順のものも紹介しているので、級位者でも安心して読めるだろう。
 とりあえず上巻ということで、歩香桂銀の手筋を解説。下巻は金角飛玉ということか。

 今までの毎コミ手筋本というと「1項目見開き2ページ」というのが通例だったのだが、本書では「1項目4ページ(見開き2つ分)」となっている。正直言ってはじめはとまどったのだが(<なぜ?)、読み進めていくうち、個々の解説にはこれくらいのボリュームがあっても問題はない。むしろこれくらいの方がいいなぁ……と180度印象が変わってしまった(笑)。
 実戦的な手筋を満載する毎コミらしい本だ。

(2005.7.17 記)

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 手筋の達人 2
著者名武者野 勝巳/著 週刊将棋/編

級位者☆☆☆☆☆
出版社名毎日コミュニケーションズ 初段〜3段☆☆☆☆☆
発行年月/価格2005.6/1,050円 4段以上☆☆☆
感想

 昔に出版された『感動! 手筋術(振り飛車編)』『感動! 手筋術(居飛車編)』を合体したもの。前回の矢倉編に続いて、今度は居飛車振り飛車対抗形の手筋を紹介している。
 ほんの半年前に『感動! 手筋術(振り飛車編)』を600円で買った白砂の立場は一体……(泣)。

 内容は入門的なものからかなり高度なものまでいろいろ。前著と同じく、題材が古いので多少の違和感はあるかもしれない。ただ、基本的な手筋の「構造」というのはどんな形でも通用するものなので、手筋を解説するという目的でならこれでも十分だろう。
 有段であれば常識という手筋も多い(というかほとんど)だろうから、そういう人は立ち読みでも十分。初段までの人なら、一度目を通して「目を養う」価値はあると思う。

(2005.7.17 記)

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 相振り革命 3
著者名杉本 昌隆/著

級位者☆☆
出版社名毎日コミュニケーションズ 初段〜3段☆☆☆☆
発行年月/価格2005.5/1,449円 4段以上☆☆☆☆☆
感想

 前2冊が非常に好評だった著者の相振り解説本第3弾。
 最近、相振り飛車が流行しているので、そういう意味でもタイムリーな本だ。

 内容は△3三角戦法の周辺がほとんど。矢倉に組む、組ませないというかけひきである。完全に相振りの主流は矢倉と美濃になった感がある。もう金無双はほとんどない(実際にそういうわけではないことは本書を読めば判る)。
 端歩をどうすべきかとか囲いの強弱といった「知りたい話題」や、相振り阻止の▲8六角、糸谷流などの奨励会員の得意戦法まで、かなりいろいろ網羅されている。
 その代わり、基本的な相振りの知識についてはほとんど語られていない。まず前2冊で基礎を固めて、有段者が応用編として本書を読む、といった体裁になっている。

 非常に濃密な内容で、理解するのに多少時間がかかるかもしれない。白砂の場合は理解というよりは古い感覚を取っ払うのに苦労させられた(笑)。
 しかし、本書を読めば最新の相振り感覚が身につくことは間違いない。有段者の相振り党は絶対に買い。特に毎コミは足が速い(すぐ品切れ絶版になる)から、読まなくてもいいから手に入れておくほうがいいと思う。
 逆に初段クラスまでであれば、本書に書いてあることを真似するより、金無双三間飛車からガンガン攻めていった方がいいだろう。そうやって攻め勝ったり切らされて負けたりして、体で「相振りの距離感」を覚える方が先だ。

(2005.7.17 記)

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 駒落ち新定跡
著者名高橋 道雄/著

級位者☆☆☆☆
出版社名創元社 初段〜3段☆☆
発行年月/価格2005.5/1,680円 4段以上
感想

「面倒な定跡を覚えるより、平手感覚で指していった方が駒落ちは簡単!」というコンセプトで、平手定跡で駒落ちを指してしまおう、という本。
 矢倉、四間飛車、三間飛車穴熊の3つの戦法が解説されている。

 6枚落ちで三間飛車穴熊というのはどーなのよ? と言う気もするが(笑)、内容がどうこうというより、そもそも駒落ちがあまり指されていない現状で、どれだけ本書の価値があるか? という疑問がまず先に立ってしまう。
『定跡なんかフッとばせ』でも『最強の駒落ち』でも、ベースは駒落ち定跡だった。あくまでも、「既存の定跡内での勝ちやすさ」を追求するものだったわけだ。本書の場合は、平手の陣形に組んでから攻めるため、必要以上に玉が固い。
 駒落ちのよさ、というか意義は、あくまでも「判りやすい形での寄せ方攻め方受け方を習得する」ことにあるはずだ。平手では上手方はかなり手を抜かないと勝負形にはならないし、そもそも寄せ形を作るまでの手数がかかってしょうがない。駒落ちは、そのプロセスをすっ飛ばして、いきなり「その部分」に行ける。だからこそ勉強になるのだ。
 本書の指し方は優秀だ。それは間違いない。おそらく下手はかなり楽に勝つことができるだろう。なにしろ、攻撃力のない上手相手に自玉は矢倉や美濃や穴熊なんだから(笑)。
 しかし、それでは駒落ちを指す意味がない。間違えたら反撃され潰され、「こう指しちゃいかん」と悟ることが駒落ち将棋の意義なのだ。

 駒落ちを定跡通りに指す必要はないと思う。定跡を覚えることが最終的な目標ではないのだから。
 ただ、2枚落ちくらいまで戦力に差がある場合、本書の指し方はなんの勉強にもならない(極論だが)と思う。
 で、そういう観点で改めて本書を見た場合、戦法そのものに面白みがないし、自玉に対する憂いがほとんどないため手順にコクがない。となると、本書を「読む」層はどこなんだという根本的な問題が沸いてくる。

 と、ここまで落としといてからフォローを入れるのもなんだが(笑)、戦法そのものは優秀だし、勝ちたいのであればこういう戦法を選択するのも悪くない。
 その昔、大学の将棋部の合宿で駒落ちが指されていた頃、4枚落ちに対して四間飛車穴熊にして勝っている人がいた。リーグ戦の1勝をほしい、という状況でなら、そういうのもアリだと思う。
 ……上手の先輩はかなり怒りながら指してたけど(笑)。

(2005.7.17 記)

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 羽生流で強くなる はじめての将棋
著者名羽生 善治/監修

級位者
出版社名成美堂出版 初段〜3段
発行年月/価格2005.5/924円 4段以上
感想

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 捨て駒の達人 詰将棋を始める前に読む本
著者名井手 畑理/著

級位者
出版社名ブイツーソリューション 初段〜3段
発行年月/価格2005.4/600円 4段以上
感想

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 新谷川浩司全集 4(平成15年度版)
著者名谷川 浩司/著

級位者
出版社名毎日コミュニケーションズ 初段〜3段
発行年月/価格2005.4/1,785円 4段以上
感想

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 四間飛車破り 急戦編
著者名渡辺 明/著

級位者☆☆☆
出版社名浅川書房 初段〜3段☆☆☆☆☆
発行年月/価格2005.4/1,470円 4段以上☆☆☆☆☆
感想

 竜王になって今一番注目を浴びている若手、渡辺の処女作。
 急戦編、ということで、今回は4五歩早仕掛け、5七銀左(鷺宮)、棒銀について解説している。

 体裁としては藤井本と似ていて、各テーマ図があって解説していく形。ただ、個人的な印象としては、藤井本ほど一本の流れがあるわけではなく、むしろ放射状にいろいろな形を解説している感じがした。
 基本/上級/プロ級と項分けしてあるのも面白いところだ。
 基本では「その形で勝つ側」から見た理想手順、上級では枝分かれや変化技など、プロ級では踏み込んで具体的に勝ちになる手順、といった感じで解説していく。ただ、じゃあ級位者は基本のところだけ拾い読みするかというとそういうことはなさそうなので(笑)、要は順番に難しい話をしていくよというマーキング程度に考えればよい。

 この「プロ級」がまた曲者で、とにかく変化が多い。
 図面もかなり贅沢に使っているのだが、それでも追いつかないほどの符号の嵐。これはさすがに盤駒がないと厳しいかもしれない。初段程度ではまずムリ。3段くらいの人でやっとどうか……といったところか。

 最新形や独自の大局観にも触れているし、他の棋書や棋士名が頻繁に出てくるのも面白い。プロ棋士がここまで類書と自説を比較する本というのもなかなかないのではないだろうか。師匠に気を使わんでいいのか? と少し気になったほどだ(笑)。
 その中で、加藤一二三に触れている部分もあった。当然棒銀のところね(爆)
 加藤本では、棒銀は△4二金とされると困る、というのが結論として書かれているが、渡辺に言わせると、そもそもその形にするのが悪いんだそうだ。「他の棋士は指さないのに、一人だけここで▲2六銀と上がる」みたいなことが書かれていて笑った(←ごめんなさい)。
 加藤本を読んで棒銀の未来を悲観した人は、迷わず買い。

(2005.5.8 記)

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 3手詰ハンドブック
著者名浦野 真彦/著

級位者
出版社名日本将棋連盟 初段〜3段
発行年月/価格2005.4/1,050円 4段以上
感想

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 加藤の振り飛車破り決定版
著者名加藤 一二三/著

級位者☆☆☆
出版社名日本将棋連盟 初段〜3段☆☆☆☆
発行年月/価格2005.3/1,365円 4段以上☆☆
感想

 ここのところやけに精力的に出版を続けている加藤一二三の本。一体なにがあったんだろうか?
 あまりいろいろ考えすぎるとちょっとシャレにならないことまで言ってしまいそうなので深くは追求しない(笑)。

 まず驚かされたのが、「これを出すんか今!」というレトロ感漂うラインナップ。

第1章 5筋位取り戦法

第2章 矢倉戦法


 昭和か? 昭和なのか!?
 矢倉戦法については昔緑の表紙の加藤本を読んだことがあって、こないだ古本サイトを覗いていたら売ってたんで衝動買いしてしまいました(笑)。
 その内容とそんなに変わってません、これ。

 その他の戦形はさすがに「今の」将棋の解説だが、あまり他の本と変わるところがない。
 最後の章の「とっておきの作戦」というのはなかなか面白かったが、これも解説と呼べるほど分量が多いわけではなく、どちらかと言うとカタログに近い感じがする。

 正直言ってやや不完全燃焼ぎみなのだが、加藤先生が出す、ということに意義があるのだろう。
 いつだったかの『将棋世界』で、「楽しそうに原稿を書いている加藤先生がいた」みたいな文章を読んだ。それが本当だとするとやっぱりこれはゴーストなんかではなく自分で書いているもので、そのバイタリティーは凄いと思う。

(2005.5.8 記)

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 鷺宮定跡 歴史と最先端
著者名青野 照市/著

級位者☆☆☆☆
出版社名毎日コミュニケーションズ 初段〜3段☆☆☆☆☆
発行年月/価格2005.3/1,449円 4段以上☆☆☆
感想

 鷺宮定跡の創始者であり、急戦の大家である2ch名人青野の著した急戦本。
 鷺宮定跡、新鷺宮定跡を主に解説しているが、その性質上、4六銀戦法なども入り混じっている。

 もともと青野の定跡本は「(外れがないという意味の)カタい」本なので今回も安心して読んだのだが、歴史というか移り変わりというか最新定跡を追うのではなく、そこに行き着くまでの攻防に焦点を置いている感じの本だ。
 事実、最新の攻防と言えるのは最終章くらいで、それ以外の内容は別の本で十分すぎるほどカバーできる。例えば藤井本や渡辺本などでも「この攻め方は振り飛車側のうまい受けがあってすたれ、代わって○○という指し手が……」というような解説が散見されるので、歴史に焦点を当てるのは正直「今さら感」がなくはない。
 ただ、青野が書いた、という点に注目をするなら、これはまさに自分が戦ってきた歴史を証言しているようなものなので、そういう読み方をすればまた面白く読める。

 最終章は最新の定跡が載っていて、また、同時に居飛車側の課題という部分もある。
 悪い表現をすると居飛車有利にはならないということなのだが、この形が現在のプロのテーマになっているということを正直に紹介してくれたことには素直に驚いた。自分には判らない、ということは、なかなか言えないことだ。

 また、これはどの本にも言えることなのだが、急戦は特に「その局面をどう見るか」という大局観の問題が関係する。
 詰みまで研究すれば大局観もクソもないのだが、その前で終わっている場合は、その局面を持って「やれる」かどうかを自分で判断しないといけない。居飛車振り飛車双方が自分よし、と思っている局面もあるし、逆に双方自信なし、として避けるケースもあるだろう。
 この部分が、居飛車党と振り飛車党では違うし、同じ振り飛車党でも微妙に違う。
 最近は急戦本が数多く出版されているので、それらの主張を比べてみることも面白いだろう。

(2005.5.8 記)

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 実戦式詰め将棋 10の手筋で初段になる
著者名中原 誠/監修

級位者
出版社名池田書店 初段〜3段
発行年月/価格2005.3/998円 4段以上
感想

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 木村一基の急戦・四間飛車破り
著者名木村 一基/著

級位者☆☆☆☆☆
出版社名日本放送出版協会 初段〜3段☆☆☆☆☆
発行年月/価格2005.3/1,050円 4段以上☆☆☆☆
感想

 NHK将棋講座のテキストに加筆修正したもので、棒銀戦法、ナナメ棒銀戦法、▲4五歩戦法、鷺宮定跡の4つの急戦を解説している。

 内容はかなり高度なものだが、急戦一本と絞っているので読んでいてもそんなに苦にならない。以前白砂のコラムでもちょこっと述べた通り木村さんは「四間飛車は急戦で潰せる」と言っていた(奨励会3段時代)人なので、実戦に生じやすい形に多く解説を割いている。

 ライターの小暮さんが関わっているようで、それも本書の解説が判りやすい一因になっているのだろう。
 また、NHK鈴木本と同じく、限られた時間の中で区切る解説になっているので、改めて読むと「もう少し変化の解説があればなぁ……」と思う部分はある。しかしまぁ、そんなに多くはないのでこれは気にしすぎかもしれない。

 それより気になったのは、変化図等でところどころに出ている、色の変わったマス目。

 本書では、というかNHKの解説当時から、「▲○○×」といった眼目の指し手をキャッチーに紹介、という体裁を取っている。例えば「強く前進▲3五銀」といった感じに。
 そのため、その章の図面はほとんど全て、上の例で言うと3五の地点がグレーで塗られているのだ。
 これがどういう効果をもたらすか。
 いい意味では常にその地点を注意して読むことができる。だから、「ここが急所だからこういう手を指してるのか……」といったことが直観的に理解しやすい。
 しかし悪い意味で言うと、ひとつの図面の中に「直前の指し手が太字で」「急所のマス目がグレーで」という二つの強調が混在することになって、少しうっとうしい。
 あくまでも個人的な感想なのだが、これはちょっと失敗かなぁ……。
 もちろん、意欲は買うし、この形式が解説の理解の助けになっていることは間違いない。
 グレー部分を少し薄くするとか、もっと違う強調方法にするとか、もう少し改良すれば、初級者中級者向けの新しい解説方法として使えると思う。

(2005.3.30 記)

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 四間飛車の急所 4 最強の4一金型
著者名藤井 猛/著

級位者
出版社名浅川書房 初段〜3段☆☆☆
発行年月/価格2005.3/1,470円 4段以上☆☆☆☆☆
感想

『四間飛車の急所』シリーズ第4弾。
 今回は後手四間飛車側が△5二金左を保留した形を解説する。

 形自体はそれこそ大山時代からあった指し方で、部分的な裏技としてはいくつかの棋書でも散見できる。有名なところでは、対右四間飛車で▲1一角成△3一金として後手有利、というものがある……といって判る人が意外と少なかったりして……。
 白砂の個人的なことを言うと、学生時代に高井さんがこの形を得意にしていて、急戦を袖飛車で破って勝星を荒稼ぎしていた。居飛車穴熊が出てしばらくの頃で、その頃は「鷺宮定跡」誕生などもあり、まだ急戦も多く指されていたものだった(<遠い目)。

 まぁ、とにかく4一金型。
 基本的なコンセプトは、△5二金左としないことにより、盤面右側に金を応援に出しやすくし、急戦を正面から受け止めようというものだ。また、△5四歩△6四歩といった歩を突かないことにより、△6四角とか△5四銀といった通常の定跡では生じない筋が発生することもある。もちろんこれはメリットばかりではなくデメリットもあってなんとも言えないところだが。
 矢倉において飛車先不突きが誕生したように、金上がりを保留することによって、居飛車の態度に合わせてこちらの体勢を変化させることができる。これが本書の4一金型の狙いである。

 そういう事情であるので、できれば、というか必ず2/3巻は読んでおかなければならない。「従来の形と比べて」という比較が多々発生するからだ。形は全然違うが、高田流新戦略3手目7八金と同じように、少しでも得をしようという志向レベルの高い形である。

 内容は、そういう事情もあってか意外と薄い。
 いや、こういう言い方は語弊があるか。比較対照という作業が多いため、新しく変化を覚えるという感じにはならないので、そんなに苦にならずに読めるのだ。少なくとも、既刊の2冊を読みこなせるレベルであれば本書はラクに読めるだろう。
 もっともここが評価の難しいところで、ということは前2冊をきちんと理解せず本書を読んだ場合、どの程度それが「役に立つ」かというと疑問なのだ。もちろん本書だけ読んで4一金型の優秀性を理解し、4一金型だけを指す、ということは十分に可能だ。ただ、それができるのであれば前2冊はラクに読めるはずだし、ということはやっぱり本書は難しいのか……。
 評価が難しいので、とりあえず「そこそこ大変」とだけ覚悟して下さい(<をい)。

 本書の特徴は、今までになかった「実戦編(という名称ではないが)」がついたところだろうか。

 今までのシリーズでは、仮にそれが実質的に実戦解説であっても、形としては定跡解説の体だった。
 しかし、4一金型は「少しの違い」がたくさん生じる実戦的な戦法のためか、全ての形を網羅的に解説という形にはしづらい。そこで、戦い方考え方だけでも判ってほしい、ということで、実戦編を設けたのだろう。
 厳しいことを言ってしまうと、煩雑であってもきっちりと「定跡」を作ってほしかったな……と思うのだが。

 以上のように、本書はかなり高度な内容になっている。
 初段くらいでは厳しい。きちんと読みこなせれば3段クラスにはなっていると思う。

(2005.3.30 記)

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 鈴木大介の振り飛車自由自在
著者名鈴木 大介/著

級位者☆☆☆☆
出版社名日本放送出版協会 初段〜3段☆☆☆☆
発行年月/価格2005.2/1,050円 4段以上
感想

 NHKの将棋講座の内容をまとめた本。

 よく言うと振り飛車vs居飛車の様々な戦い方が載っている本。悪く言うと雑多すぎて変化が薄くよく判らない本。あくまでもカタログ、俯瞰として眺めるために使う本だと考えればいいだろう。
 それぞれの章末に簡単な「その戦形における振り飛車の戦い方」が載っているので、振り飛車を指したことがない! という初級者の人でも、だいたいの指し方は判ると思う。もっとも変化は「ほぼない」ので、本の通りに進むという甘い考えは捨ててかかった方がいい。本書は、「こういう<感じ>」という指し方指し回しに重点を置いた本である。

 講座をそのまままとめた……というより、ひょっとすると更に圧縮しているかもしれない、と思えてしまうくらい本筋以外の内容がないので、これ一冊ではあまりに辛い。本書を読んだあと、別の本のフォローか必要だろう。
 また、これはあくまでも個人的な意見なのだが、非常に読み辛かった。印字の濃さか書体か太さか行間か文字間か図と文字の間隔か、その辺はよく判らないのだが、とにかく読みにくい。もう少し他社製の棋書を参考して、「読みやすい」本作りにも留意してほしい。

(2005.3.2 記)

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 第十七期竜王決定七番勝負 激闘譜
著者名


級位者
出版社名読売新聞 初段〜3段
発行年月/価格2005.3/1,785円 4段以上
感想

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 手筋の達人
著者名武者野 勝巳/著 週刊将棋/編

級位者☆☆☆☆
出版社名毎日コミュニケーションズ 初段〜3段☆☆☆☆
発行年月/価格2005.2/1,050円 4段以上☆☆☆
感想

 矢倉の手筋を次の一手形式で紹介する本。毎コミおなじみの復刻文庫で、2冊の「手筋の達人」が1冊にまとまって出版されている。
 文庫のくせに非常に分厚い。京極夏彦じゃねーんだから、とも思うが(笑)、次の一手形式だとサクサク読めるので、このくらい厚くてもいいのかもしれない。一度通しで読むだけでかなり「おなかいっぱい」になる。

 内容は、定跡となっている基礎的な変化から中盤の芒洋とした局面までさまざまで、特に応用編は「ここでは手を渡すのがいい」とかかなり高度な駆け引きまで紹介されている。もっとも、現在では定跡化されているものも、逆に定跡化されて廃れて最近見ないなぁ……といった形もあるので、この辺は復刻ということで多少多めに見てほしい。

 初級者にとってはこういう基本的なトコからやった方がいいと思うので、立ち読みでいいからパラパラと読んでみてほしい。最初から読んでみて、一つでも知らない変化、形が出てきたら本書は買いだ。そのあとどんどん高度な形が出現するのだから。
 逆に高段者の矢倉党は、これを知らないようではまずい。タイムトライアルだと思って挑戦してみてほしい。

(2005.3.2 記)

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 振り飛車破りユニーク戦法
著者名田丸 昇/著

級位者☆☆☆
出版社名創元社 初段〜3段☆☆☆☆☆
発行年月/価格2005.2/1,260円 4段以上☆☆
感想

 対振り飛車のマイナー戦法を集めた本。
 奇襲色や変態色はあまり強くはなく、あくまでもマイナー戦法の色合いが強い。

 内容は、飛車先不突き右四間、富沢キック、5筋位取り急戦・持久戦、相振り左玉、地下鉄飛車、対三間飛車桂跳ねず▲4五歩急戦。ラインナップを見ただけでどこかで解説された感が漂うが、こうやって集めてみると面白そうに見えるから不思議だ(笑)。

 変態将棋党なら(←いるんかそんな奴がゴロゴロと)知っている形がほとんどなので新鮮味がない。ただ、棋書であまり見ない形が多いので、一冊にまとめたという価値はあるかもしれない。
 変化もそこそこ多いので、一定の形に組めるようになれは、その戦法をモノにするまでにさほど時間はかからないだろう。
 一度は手にとって、形を知っておくのは悪くないと思う。

(2005.3.2 記)

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 森信雄の勝ちにいく! 詰将棋ドリル
著者名森 信雄/著

級位者☆☆☆☆☆
出版社名山海堂 初段〜3段☆☆
発行年月/価格2005.3/1,260円 4段以上
感想

 1手3手5手の詰め将棋本。
 ドリルってなによ? と思って、開いてみて意味がすぐに判った。確かにドリルだ。
 基本的な詰め手筋を抽出して紹介する形式で、問題形式と捉えない方がいいかもしれない。何度も「見て」覚えるタイプの本だ。

 詰将棋は難しいという話をよく聞くが、「詰パラ」みたいなのは置いといて、将棋世界や週刊将棋の詰将棋クラスであれば、既存の詰め知識があればほとんどが数分から十数分で解くことができる。まぁそこまで行くための本ではないが、その第一歩として、「10分で解ければ初段」くらいの詰め将棋であればさっくり解けるような知識を得るための本である。
 実際、一手詰という形を紹介する詰め将棋本はあまりないので、本当の初級者の方でも十分に「モト」が取れると思う。別に本書のガイド通りに□にレ点を埋めていく必要はないが、そのつもりで何度も読み返すことだ。そうすればきっと詰め将棋の知識は身についていく。
 段クラスの人なら、本書を手にとるのは時間のムダ。いくら手筋を知るためとは言ってもさすがに易しすぎる。「5手詰めハンドブック」辺りからにするのがいいだろう。

(2005.3.2 記)

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 上達するヒント
著者名羽生 善治/著

級位者☆☆☆☆☆
出版社名浅川書房 初段〜3段☆☆☆☆
発行年月/価格2005.1/1,365円 4段以上☆☆
感想

 将棋を指す時の大局観とか考え方について、羽生が解説した本。
 いつだったか会社の厚生部のイベントに無理矢理狩り出されてねずみランドまで行かされて、「俺はこんなとこ嫌いじゃあ!!」とか言って速攻で新森ビルに遊びに行って、そのついでに寄った八重洲ブックセンターで『羽生の奥義』とかいう本を見つけて中を見てみたら外人向けの解説かなにかが書いてあって、どうもその本を一冊にまとめたものらしい(長ぇよ)。

 内容としては、先崎の『ホントに勝てる〜』シリーズを将棋全般に拡充したような感じだ。位とか捌きといった概念をなるべく言葉で説明しようという意図が感じられた。随所に「〜か判れば有段者」といった記述があるように非常に難しい作業だったと思うのだが、なかなかうまくいっていると思う。
 大人のための入門書、という体ではあるが、読み進むとともに対象棋力も上がっていくので、実際には初段くらいないと全部を理解するのは難しいかもしれない。初心者向けではなく、初級者、中級者向けの本だろう。

 将棋の概念は口で説明するのが本当に難しいのだが、それに果敢に挑戦した本だと評価したい。
 もっとこういう本が出れば、アマチュア棋力の底上げにもなると思う。

(2005.2.10 記)

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 CD-ROM版 升田幸三全局集
著者名升田幸三全局集製作委

級位者
出版社名講談社 初段〜3段
発行年月/価格2005.1/13,440円 4段以上
感想

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 図式百番
著者名内藤 國雄/著

級位者
出版社名毎日コミュニケーションズ 初段〜3段
発行年月/価格2005.1/3,990円 4段以上
感想

 詰将棋の名手内藤國雄の詰将棋集。
「図式」という言葉には、江戸時代の名人が将軍様に奉げた「献上図式」で知られるように、「自分の持てるもの全てを駆使して作り上げた作品」という意味合いが辞書的な言葉の意味以上に強く感じられる。著者が「図式」という言葉を敢えて使ったのもそのためで、この辺は前書きに詳しい。
 箱入り豪華装丁で税込み3,990円というのは大層なものだが、それなりのものに仕上がっている。

 内容的には、自身が前書きで触れている通り実戦形が多く、個人的にはちょっとなぁ……という気がした。
 それこそ『図巧』『無双』のような構想作や難解作てんこもりの「図式集」であってもよかったはずだ。もともと詰将棋のような解答のさせ方を考えて作っている本ではなく、あくまでも鑑賞主体の「詰将棋」なのだから。
 この点は某詰将棋作家氏の意見に同意なのだが、だからといって本書が「くだらない作品ばかり収録されたそこらのえらく高価な作品集」とまではさすがに言えないと思う(←違うものを指していたらごめんなさい)。白砂の勘違いであればいいのだが、あまりの言い方なので少し気になった。まぁ個人の感じ方だから別にいいっちゃあいいんだけどね(笑)。

 以下は正に個人的な話を。長いよ(笑)。

 白砂がはじめて「詰将棋」というものに触れたのは、内藤9段(この言葉がしっくりくるのはやっぱこのあと無意識に「将棋秘伝」と続いちゃうからかなぁ(笑))の著書だった。
 本書でも触れられている筑摩書房の現代将棋全集。この「図式集(中)」の著書が内藤9段だったのね。
 何度かこの欄で触れているように、白砂が子供の頃、市立図書館ができたのが小学5年生のとき。将棋の本も片っ端から読み漁って、大体読み尽くしたぞ……という時、書架の最上段の豪華装丁本が目についた。全集だったんで、場所を喰うから大体こういうのってのは最上段か最下段に置くんだよね図書館ってのは(笑)。
 そこで書かれていたのが、内藤9段が子供の頃に出会ったという図巧1番の話。
 見るからに難しそうな詰将棋に出会い、図面を覚える少年。詰まそうとしても判らなかったんで今度は解答を覚えるために立ち読みに通い詰め(笑)、飛打ち飛合での打歩詰打開に驚愕する。そして(本書には書かれていないが)、その作品を自作だといって兄達に見せ、「うぅむ、國雄は天才や」と言われるところまで、解説を含めてその本は何度も何度も読んだ。

 白砂もちょうど小学6年生の12歳。これは運命的でしたよホントに。

 そこからやっぱり白砂も子供ながらに詰将棋作成を始め、とはいっても棋力が5級くらいだったからたいした作品も作れなかったんだけど(笑)、その頃の創作ノートは今も大切に持ってます。
「詰将棋」という、将棋ではあるけども全く違う世界への興味を広げてくれたのは、間違いなく内藤9段だった。

(2005.2.14 記)

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 決定版 石田流新定跡
著者名鈴木 大介/著

級位者☆☆☆☆☆
出版社名創元社 初段〜3段☆☆☆☆
発行年月/価格2005.1/1,260円 4段以上☆☆☆
感想

「あの」鈴木大介の創元社本。それだけでなんとなく察しがつくが、その通りの豪快な内容になっている(爆)。

 内容は「▲7四歩早仕掛け」「棒金」「居飛車穴熊」の3つ。
 最初の▲7四歩は、▲7六歩△3四歩▲7五歩△8四歩▲7八飛△8五歩▲7四歩という仕掛けのもの。『将棋世界』の「盤上のトリビア」でも紹介されたし、そのちょっと前に『近代将棋』で、それを読んだ白砂がコラムでも紹介している。
『東大将棋ブックス石田流道場』では、この仕掛けは△4四歩という軽い受けがあってムリ、という結論だったのだが、本書では石田流成功となっている。よくよく読み比べてみると、『石田流道場』では▲6五角としていたところを本書では▲5六角と深く引くようになっており、『石田流道場』での受けはうまくいかないということになっている。
 どっちが正しいのかは自分の目で見て確かめてほしい

 棒金と居飛車穴熊は、いずれも『島ノート』で紹介したような形。
 確かヅラノートは棒金優勢だったと思うのだがその辺は素通り(笑)。居飛車穴熊はダイヤモンド美濃が優秀、という結論だったので、これは同じ結論だ。

『石田流道場』の紹介で書いたことなのだが、石田流はやはり独特の形とか間合いがあって、少し苦しそうに見えるけどこの形になれば勝負形、というパターンが結構ある。
 もちろんプロの目で見れば実際は苦しいのだろうが、アマチュア同士の叩き合いならそうとも言えない。「攻められている」「受けさせられている」「美濃囲いが固くて寄せが見えない」など、居飛車側にプレッシャーとなる要素が多いからだ。そういう意味では、本書くらいざっくり解説してくれた方が、石田流魂(笑)が判りやすく理解できるのでいいのかもしれない。

 初段、2段くらいまでの石田党は絶対に買い。▲7四歩の変化が気になる有段者も買い。その他の人は、パラパラと見るだけで十分だろう。

(2005.2.10 記)

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 谷川流寄せの法則 応用編
著者名谷川 浩司/著

級位者
出版社名日本将棋連盟 初段〜3段☆☆☆☆
発行年月/価格2004.12/1,365円 4段以上☆☆☆☆
感想

 前著の「基礎編」に続く応用編。なのだが……

そんなに難しくなってない気が……

 あくまでも白砂の感想、なのだが、基礎編にあった「きちんと解説する」感があまりなく、問題形式でどんどん進んでいく。最初の格言を用いての解説もなんか上っ滑りの感があって、あまり実用的(基礎編と比べて)ではない。
 難易度の方も、一つ一つの問題の難易度は基礎編とさほど変わらないと思う。
 これが仮に、読む深さなり読む広さなり、あるいは攻防の速度計算だったり、もう少し難しい要素が入って入れば別なのだが、そんな感じもあまりしなかった。

 谷川の本はそれこそ昭和の頃から良書が多く、期待する部分はあったのだが、その期待が過剰になってしまったのかもしれない。また、『寄せが見える本』の応用編との比較でそう思えてしまったのかもしれない。と、まぁ、いろいろ外部要因があって偏見が入ってしまっているのかもしれないが、要するに、白砂としてはあまり期待したものではなかった。

 もう少し「解説」がきちんとあって、寄せの系統立てでもしてくれたら、評価はまた違ったものになったかもしれない。

(2005.2.10 記)

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 日本将棋用語事典
著者名原田 泰夫/監修

級位者☆☆☆☆
出版社名東京堂出版 初段〜3段☆☆☆☆
発行年月/価格2004.12/2,520円 4段以上☆☆
感想

 将棋でよく使う用語を集めて解説した本。
 将棋用語だけでなく、将棋界用語、詰将棋用語、盤駒作成用語まで網羅している。
「辞典」という感じではなく、やっぱり「事典」。説明が非常に細かく丁寧だ。

「名棋士の談話室」と名づけたコラムページが非常に充実していて(下1/3が全部そう)、一つ一つの言葉について島、森内、佐藤、羽生、中原、米長の各氏が解説している。
 ここを読むだけでも十分に面白かった。
 もう一度読みたいかというと微妙なので買う価値があるかと言われると困るが、言葉の定義を知ることも重要な上達法の一つだと考えているので、初段くらいまでの人なら手元に置いておいて損はないと思う。有段者なら、知っている言葉ばかりだろうから値段=コラム代ということになるだろう。

 ちなみに白砂は、「肩銀」「兜矢倉」という言葉と、盤駒作成関連の用語が判らなかった。なんだよ肩銀って……。

 少し気になったのが、あとがきの言葉。
 どうやらこの本、最初は伊藤果と編集とで出版する予定だったらしい。ところが、言葉の解釈について揉めたようで、伊藤果はいわば「舞台から降りた」形となっている。
 伊藤果ということを考えるとおそらく詰将棋用語関連での行き違いだと思うのだが、なんでそんなことになってしまったのかを考えると少し寂しい。

(2005.2.10 記)

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 羽生の法則 Volume4 飛角の手筋
著者名羽生 善治/著

級位者☆☆☆☆
出版社名日本将棋連盟 初段〜3段☆☆☆☆
発行年月/価格2005.1/1,365円 4段以上☆☆
感想

 法則シリーズ第4段。最後は大駒の飛角。
 これで一応駒のシリーズは全て終えたはずなので、おそらく一段落ついたと思われる。

 内容はといえばいつものように問題形式で手筋を紹介しているが、やはりいつものように初段前後、もしくは級位者を対象にしている感じだ。定跡手順の解説もいくつかあったりして、あくまでも基本手筋を紹介するだけにとどめている。
 それをありがたいと感じる棋力の人は買い。
 できれば、購入前にパラパラとめくって対象棋力に合っているかどうかを確認してほしい。

 せっかく羽生をかつぎ出して本を出しているのだから、今度はもう少し高度な話にしてほしい。もちろん棋力の底上げも大事だし普及も大事なんだけど、羽生だからこそできることというのがあると思うのだ。

(2005.1.14 記)

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 東大将棋ブックス石田流道場
著者名所司 和晴/著

級位者
出版社名毎日コミュニケーションズ 初段〜3段☆☆☆☆
発行年月/価格2004.12/1,365円 4段以上☆☆
感想

 東大将棋ブックス最終巻は石田流。もう少し早く出してほしかった気もするが、なかなかネタもないし難しいところだったのだろう。

 ▲7六歩△3四歩▲7五歩という形から入る早石田系の石田流が主で、△6二銀と普通に受ける形、△4二玉と△8八角成▲同銀△4五角を狙う形(通常▲7六角で受かるのだが、△4二玉としているので▲4三角成の先手にならない)などが解説されている。
『将棋世界』の「盤上のトリビア」で紹介された鈴木大介の新手も入っていて、おそらくこれがあったから刊行を敢行したのではないか……と白砂は見ている(笑)。

 基本的に最善を尽くすと居飛車よしになる変化が多く、元升田式石田流党としては少し不満が残る。
 実際には最善の手順なのかもしれないが、どうも石田流側が「実戦的」でなく、なんとなく妙な形になってしまっているのだ。升田式も7七桂戦法と同じように「玉を固めてドカン」という戦法なので、なにか解説手順が作り物くさく感じてしまう。おそらくプロの実戦から採ったものなので白砂のざれごとなんかよりは説得力があるに決まっているのだが、むしろアマチュア有段者、例えば24の高段者辺りの棋譜を下敷きに解説してくれた方が、アマチュアには判りやすく実戦的だったと思う。
 ちなみに鈴木新手は△4四歩という手があって失敗に終わっていた。興味のある人は実際に本を当たって下さい。

 いろんな戦形(パターン)を解説しているので、初段くらいの人が盤駒を出して並べると意外とためになると思う。白砂程度の棋力でも少し物足りなかったので、高段者の方々には拍子抜けの内容かもしれない。級位者は手を出さない方がいい。

(2005.1.14 記)

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 我が道を行く定跡の裏街道
著者名週刊将棋編集部/編

級位者☆☆☆
出版社名毎日コミュニケーションズ 初段〜3段☆☆☆☆☆
発行年月/価格2004.12/1,365円 4段以上☆☆☆☆☆
感想

『定跡外伝』系の本だと思っていたら、B級戦法の達人系の本だった。奇襲・変態戦法を20、紹介する本。

「紹介」と書いたが、変化がほとんど書かれていない戦法も数多くあるので、解説とまで言えない。もう少し数を絞って解説を増やして欲しかったという気もするし、いやそんなことよりよくぞいろいろ紹介してくれたという気もするのでなんとも言えない。これはもう、本書をどう見るかによるだろう。
 振り飛車系の将棋が多いが、アマチュア向けということだから仕方がない。

 パックマンや後手角頭歩などはさすがにウソ(対策が知られているのに触れていない)だし、パーフェクトディフェンスなどはそもそもこうなるのかどうかがウソ臭い。
 それでも、よくもまぁ変態戦法をこれだけ集めたものだ。
 いくつかは自分で指してみたいと思うものもあった。20あるうちの一つでも気に入ったものがあれば、それで本書は成功なのだろう。

 ちなみに、本書に出てくる「対振り棒金」。これ、まんま3二金戦法である。
 掲示板に指摘があって読んでみたのだが、白砂の実戦にほとんど同じ攻め筋(斬られ役側の攻め筋も)が出てくる。
 ここに白砂の実戦譜があるので、44手目以降と本書を比べてみて欲しい。

3二金戦法、ついにメジャーデビ……

違う

(2004.12.25 記)

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 田村流けんか殺法
著者名田村 康介/著

級位者
出版社名毎日コミュニケーションズ 初段〜3段
発行年月/価格2004.11/1,449円 4段以上
感想

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 将棋界の真相
著者名田中 寅彦/著

級位者
出版社名河出書房新社 初段〜3段
発行年月/価格2004.11/1,575円 4段以上
感想

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 相居飛車の定跡
著者名青野 照市/著

級位者☆☆☆☆☆
出版社名創元社 初段〜3段☆☆☆☆
発行年月/価格2004.11/1,260円 4段以上☆☆
感想

 相居飛車の定跡、というので相掛かりから横歩取りから矢倉からなにからなにまで入っている本だと思ったら、違った。
 相掛かり3七銀戦法と、対ウソ矢倉、それと相矢倉のみが解説されている。
 要するに居飛車党なら上の3戦法を覚えれば十分だろうというのが本書の主張なのだ。▲2六歩と指し、後手が△8四歩としたら相掛かり3七銀戦法へ、△3四歩としたら▲7六歩から矢倉へ、というわけだ。後手だったらどうするの? という話はなかったことにするが(笑)、なるほど相居飛車を指したければそれだけで指すことはできる。

 内容は創元社らしく簡潔にまとまっている。
 3七銀戦法も矢倉も結局は先手が攻めていく形なので、「攻めが続くので棋力が低ければ先手(攻めてる方)有利」というコンセプトで選んだのだろう。気持ちよく攻めて、気持ちよく勝っている。もちろん実戦でそううまくいくかは判らないのだが、攻めの形、戦術(戦略ではなく)を学ぶには十分だ。
 最終章の相矢倉は現在流行の矢倉形を紹介し、少しだけ骨っぽさの出しているので、初段くらいの人でも十分参考になるだろう。

 もう少し詳しい攻防は東大将棋矢倉道場に任せて、「相居飛車を指す」ことに重点を置く。創元社らしい作りで、これはこれで役に立つ本だと思う。

(2004.12.11 記)

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 最強の駒落ち 講談社現代新書 1757
著者名先崎 学/著

級位者☆☆☆☆☆
出版社名講談社 初段〜3段☆☆☆☆☆
発行年月/価格2004.11/840円 4段以上☆☆☆☆
感想

 8枚落ちから2枚落ちまでの駒落ち定跡を解説した本。『将棋世界』の連載「駒落ちのはなし」を加筆修正し、いくつか変化をプラスしたものである。

 本書の特徴はなんと言っても「上手の指し方」が書かれていることだろう。
『将棋大観』はそもそも上手はうまく斬られるのが前提となっているし、『定跡なんかフッとばせ』は上手のゴマかし方は載っているが、あくまでも下手側から見た「紛れ筋」として採り上げられているだけだ。本書は、おそらく初めて「上手の目線」からも駒落ちを語っている本だ。

 内容も十分に面白い。
 8枚落ち棒銀対策、6枚落ち矢倉・四間飛車、4枚落ち向かい飛車(おそらく加筆分)など、始めて見る戦法も数多い。また、2枚落ちに代表されるような完成した駒落ち定跡もきちんと解説されている。本書を読めば、駒落ちを指したくなることは間違いない。

 一貫して主張されるのは「駒落ちは力を養うのに最適」ということ。
 最近は指されていないが、確かに駒落ちは将棋の体力がつく。平手だと勢力が均衡しているためになかなか攻めや受けの手筋を使うことはできない。しかし、8枚落ちではこちらが攻め潰すかどうかが問われるし、2枚落ちではたった金一枚ではあるが「攻めてくる恐怖」と戦うことになる。上手の戦力を減らすことによって、強くなるためのテーマが明確になるわけだ。
 実際、白砂の同級生の女の子(昔、田中寅彦のNHK将棋講座でパソコンをいじってた子)は、東京渋谷「高柳道場」に通い、6枚落ちから2枚落ちを指して1年弱で初段程度になった。プロの指導のおかげもあるだろうが、自分の棋力に合わせて考えることができるのは駒落ちの最大の長所である。

 白砂は自称定跡ヲタなのだが、振り返ってみるとその発端は『定跡なんかフッとばせ』だったような気がする。完成された二枚落ち定跡があり、実はそこには様々な裏街道がありと、ヲタ垂涎の内容だった。
 本書は、そんな定跡ヲタを満足させる内容でもある。一回は読んで損はない。

(2004.12.11 記)

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 四間飛車の急所 3 急戦大全 下
著者名藤井 猛/著

級位者☆☆☆
出版社名浅川書房 初段〜3段☆☆☆☆☆
発行年月/価格2004.10/1,470円 4段以上☆☆☆☆☆
感想

「藤井の頭脳」とも言える四間飛車の急所シリーズ第3弾。今回はナナメ棒銀、4五歩早仕掛け、棒銀を解説する。

 それぞれの形についてどんなことが書かれているかと言うと、

  • ナナメ棒銀は『新鷺宮定跡』の▲3九飛の周辺が基本。▲6八金型は2巻でやっているので、ここでは▲6九金型を解説している。▲3九飛を避けて△4五歩と開戦する形、▲3五歩と押さえる亜急戦の形も紹介している。
    △4五歩の決戦などはそれこそスーパー四間飛車や世紀末四間飛車の頃からあった懐かしい形で、古くて新しい変化がいっぱいある。最近では振り飛車ワールドの2巻に指定局面戦があったが、その変化に対する回答も入っている。
  • 4五歩早仕掛けは、▲6八金型と▲6九金型の2種について解説。結論をおおざっぱに言うと、▲6八金型は振り飛車よし、▲6九金型は居飛車よし。そこで、▲6九金型の場合は玉頭銀で牽制する。
  • 棒銀は旧式の受け方から加藤流、△4二金型の受け、そして△4二金型を避ける居飛車の工夫。あと、△5三金と正面から受ける形。加藤先生の魂の叫びが聞こえてきそうだ(笑)。
 といったところ。
 ナナメ棒銀のところは前著との兼ね合いがあるので、できれば前著をもう一度読んで、それから本書を読み始めるといいと思う。

 誤解を恐れずに個人的な感想を述べると、前著に比べると新手的な驚きは少なかった。その代わり、システマチックな感じがかなり強くなっている。
 2巻の戦法ではいろいろ実戦的な指し方があったのだが、本書の形はかなり研究されているので、「実戦的」とか「裏技的」なものが少ない……という風に見える。玉頭銀も昔は実戦派が指すものだったが、いまやここまで整備されている。本書の驚き方はそんな感じだ。

 本の編集の部分については完成された感がある。
 いくつか誤植があったが、これは本というものの宿命と割り切るしかないのかな。しかし、▲4七歩を△4七歩という間違い方は少し罪が重い(笑)。4五歩早仕掛けで後手から△4七歩と叩くのは定番の筋だ。▲4七歩というのはそれを防いだ柔らかい好手なのだが、その説明の時に△4七歩と書いてあったので、読んでいて一瞬混乱するのだ(笑)。

 次巻は△4一金待機型ということで、これは全く新しい攻防になるだろう。「急戦版藤井システム」とでも呼ぶべき形なので、早く読んでみたい。

(2004.10.19 記)

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 東大将棋三間飛車道場3 急戦
著者名所司 和晴/著

級位者
出版社名毎日コミュニケーションズ 初段〜3段
発行年月/価格2004.10/1,365円 4段以上
感想

 今度の東大将棋道場は急戦。昔からある▲3七桂と跳ねて▲4五歩と突く急戦と、桂を跳ねずにいきなり▲4五歩と仕掛ける急戦が載っている。あと、5筋を突かない形に対しての急戦もあるが、これはもともと三間飛車が悪いとされている形で、旧来の定跡に近い。

 正直、時代が変わったなと思った(笑)。白砂が学生の頃には、対三間飛車の急戦は▲3七桂跳ねしかなかった。しかも▲8八角には△4二金が最善で、△4三金は二枚替えの変化があって後手損と言われていた時代である。現在では△4三金が最有力とされているし、いきなり▲4五歩と仕掛ける急戦なんて聞いたことがなかった(知らなかっただけかもしれないが(笑))。
 二枚替えの変化はウソで、実は△4三金が有力ではないかという話が始めて出たのが白砂の記憶では『定跡外伝』。それからしばらくは三間飛車の本など見かけることすらなかったのだが、ここ1年ほどで、コーヤン流や深浦本、加藤本など、様々な急戦の解説書が出版された。本書もなんか流行に乗った感はあるが(笑)、貴重な一冊だろう。

 内容は始めに述べた通りだが、実際によく読むと、既存の定跡書とは微妙に採り上げている変化が違ったり、書き込みの量も違ったりする。別の定跡書をお持ちの方は、実際に読み比べてみて欲しい。ある本で掘り下げられている変化を「これはダメ」とあっさり流していたりもしている。
 また、冒頭で5筋不突き急戦の話をしたが、実際にこの定跡を詳細に解説した本を白砂は初めて見たので、そういう意味では参考になるかもしれない。おそらくほとんどの三間飛車党は普通に▲5六歩△5四歩と指してくるだろうから役には立たないと思うのだが(笑)、知っておくことは必要だ。

(2004.12.11 記)

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 コーヤン流三間飛車 実戦編
著者名中田 功/著

級位者☆☆☆
出版社名毎日コミュニケーションズ 初段〜3段☆☆☆☆☆
発行年月/価格2004.9/1,365円 4段以上☆☆☆☆☆
感想

 急戦編、持久戦編に続いて、今度は実戦編と銘打ったコーヤン三間飛車シリーズ。東大道場シリーズといい、ここのところやけに三間飛車が注目を浴びている。
 おそらくその一因の一つとなっているのがこのコーヤンこと中田功の存在で、プロの間で非常に評価が高い三間飛車党である。「実戦編」ということで、これはマニアが待ち望んでいた実戦集かと思いきや……。

 実戦譜は後ろの方に固まっていて、棋譜もついている。
 しかし、この本は実戦譜集ではない普通の定跡書である。

 本の半分は、今まで出版した急戦編、持久戦編のフォローになっている。時間が経って結論が変わったもの、書ききれなかった変化などをここで改めて詳解している。
 また、「実戦」の部分も、解説されているのは組み合った後からで、中盤から寄せまでの解説となっている。序盤の駒組みについてはほとんど触れられていない。

 これで「実戦編」と出版してしまう出版社にまず驚いたが、内容は非常に濃く、面白く読めた。ギリギリの部分での優劣を解説しているため、初段くらいでは少し難しいのではないかと思う。旧来の定跡を知っている人が、ここで新定跡を手に入れる。そんな感じの本だ。

 実戦解説を部分的にしたのも、好意的に見れば「見たいところだけを集中的にたくさん解説する」という表れなので、これはこれで評価できると思う。
 一冊の本として出版をする場合、序盤はどうしても似たような手順になりがちなので、解説部分に書く事がなくなって(笑)いきおい棋士の人となりを紹介したり対局時の精神状態を解説したりと「ムダ」なものになりがちだ(笑)。それをバッサリと省いて解説したいところだけ解説をしたと考えれば、合理的ではある。白砂はどちらかと言うと「よみもの」と捉えているので(だから観戦記や自戦記は好きだけど棋譜集は嫌い)、そのムダな部分をどう捌くかというところが見たかったりするあまのじゃくではあるのだが(爆)。

 一つ気になったのは、持久戦の解説。
 玉を3九に止めて穴熊を攻略する手順を解説している。


XPはまだかよ

(2004.10.02 記)

■追記

いやだから出てるよ

 ……というわけで、「コーヤン流三間飛車の極意持久戦編」にも書きましたが、同書で既にXPの解説はやっていました。
 上記レビューは間違いです。訂正とともに、コーヤンと毎コミさん、読者各位にお詫びいたします。

 こちらのページに詳しい顛末を書きましたので、参考にしていただければと思います。

(2004.10.6 記)

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 最強の棋譜データベース 将棋倶楽部24
著者名久米 宏/著

級位者☆☆
出版社名成甲書房 初段〜3段☆☆☆☆☆
発行年月/価格2004.9/6,800円 4段以上☆☆☆☆☆
感想

 棋書というよりはCD-ROMといった方がより正確だと思うが、将棋倶楽部24で指された棋譜を24万局以上集めたという膨大な棋譜データベース。以前にも出ていたような気がするので、これは第2弾ということになるのだろうか(<第3弾だったらどうしよう(笑))。
「本」の部分は、CD-ROMの使い方や検索方法、24の使い方などが書かれている。24を知らない人、「棋泉(検索ソフト)」を使ったことのない人は、これを読めば一応は使いこなせるようになるだろう。
 あとは、第一回近将カップの観戦記と、24上位者リストが載っている。

 観戦記は少しレイアウト等が読みにくかったが、プロアマ入り乱れての戦いだけになかなか面白い将棋が多かった。
 個人的には、中田功が3九玉型三間飛車を指していて、思いっきり「XP」と紹介されていたのを読んで少し鬱になった。くそうこっちから読んどけば……(笑)

 検索機能を利用して端攻めの攻防を勉強するとか、定跡の「その先」を知る、というのは、言われてみればなかなか面白い勉強法だ。棋譜はとりあえずは信頼できる程度に強い人のものが揃っているので、実戦特有の「強い」手順が体系的に学習できる。ただ、それをみんながみんなやればいいかというとそういうものでもないと思う。特に級位者レベルであれば、そんな勉強方法よりは素直に棋書を読んだ方が手っ取り早いだろう。

 ある程度の棋力があって、「棋譜並べ」ができる人なら垂涎のアイテムだと思う。
 そうでない人は、この6,800円は別のことに使った方がいい。

(2004.10.13 記)

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 3手・5手からの詰将棋 初段・1・2級 基本手筋から実戦問題まで120題
著者名深浦 康市/著

級位者
出版社名成美堂出版 初段〜3段
発行年月/価格2004.9/714円 4段以上
感想

 

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 羽生の法則 Volume3 玉桂香の手筋
著者名羽生 善治/著

級位者☆☆☆☆☆
出版社名日本将棋連盟 初段〜3段☆☆☆
発行年月/価格2004.9/1,365円 4段以上
感想

 すっかり定着した法則シリーズの第3弾。今度は玉桂香の駒に焦点を当てている。
 コバケン本と微妙に構成を変えているのは何か意味があるのだろうか……?

 内容は今までと同じく、駒の特徴を生かした手筋を紹介している。
 序盤から活躍する駒ではないので、必然的に中盤から終盤、寄せにかけての解説になっているが、まぁこれは仕方がないだろう。既存の棋書でも解説されている手筋が多いが、初級者から初段くらいまでの人には参考になると思う。

 玉の手筋については「早逃げ」ばかりだったが(笑)、これも駒の特性上仕方がないか。いくつかは玉の利きの多さを生かした手筋もあったが、基本的には「早逃げすることで玉の安全度グーンとあぁーっぷっ!!」という手が多い。好意的に見れば、こういう手筋は知っていてもなかなか指せないので(白砂がそうです)、前へ前へと出がちな級位者にはいい薬になるのだろう。

 少し気になったのは、玉の手筋と桂香の手筋とでは、手筋感というか雰囲気というか、そういう「感覚」が違うのではないか、ということ。
 飛び道具という意味もあるし、攻め駒の桂香と受けないといけない駒である玉とではやはりコンセプトが違う。これらが混ざってしまっている構成はどうかな……? と思った。やっぱり飛角桂香でひとまとめとしたコバケン本の方が、流れとしてはスムーズに読めるのではないだろうか。
 もちろん、丁寧に解説してあるという点では評価できるし、本書が駄作というわけでは決してない。
 ただ、なんとなく、前例があるからムリヤリ編成を変えたようにも思えるので、そんなことしなくても本書の価値は変わらないのに……と思ったので。

(2004.9.24 記)

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 なんでも矢倉
著者名森下 卓/著

級位者☆☆☆☆
出版社名創元社 初段〜3段☆☆☆☆
発行年月/価格2004.9/1,260円 4段以上☆☆
感想

 中飛車、棒銀に続くなんでもシリーズの第3弾は矢倉。いくらなんでも「なんでも矢倉」にはできないだろー、と思っていたら、うまくというかずるくというか(笑)、確かに「なんでも矢倉」になっている。

 内容は、対振り飛車の矢倉棒銀! と玉頭位取り、そして愛居飛車での後手無理矢理矢倉の3つ。

 振り飛車に矢倉棒銀なんてありかよ! という気もするが、本書に書いてある通り、加藤一二三が指していた。昔、加藤自身が書いた著書を読んだ記憶もある。
 戦法としては鳥刺しに近い感覚である。一応急戦と持久戦の両方を解説してもいるし、級位者が得意戦法にするのにはいいかもしれない。


 玉頭位取りは、もう玉頭位取り、としか言いようがない。そりゃ確かに銀立ち矢倉だけどさぁ……。
 それでも、意外と高度なことも書いてあるので、少しは役に立つかもしれない。もっとも、振り飛車が飛車を振り戻して玉頭戦になる対抗策についてはほとんど触れられていないので、初段くらいではもう役に立たないと思う。

 最後の無理矢理矢倉は、矢倉に組むというよりはそれ以外の形について多くを割いているようにも思える。後手番で飛車先不突きの腰掛け銀の形なども書いてあるので、少しは参考になるだろう。

 当たり前の話だが全体的に初級者向けなので、細かいことは言わず、なんとなく戦法の雰囲気をつかむといったくらいの心構えで読むのがいいと思う。

 しかし、次はなんだろうか……?

(2004.9.2 記)

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 三間飛車戦法 軽快に豪快に一気に寄せきる
著者名鈴木 大介/著

級位者☆☆☆☆☆
出版社名創元社 初段〜3段☆☆☆
発行年月/価格2004.8/1,260円 4段以上☆☆
感想

 四間飛車やゴキゲン中飛車でおなじみの鈴木大介が、今度は三間飛車の解説を書いた。
 創元社+鈴木大介というラインナップ、予想通りの(爆)仕上がりになっている。

 内容としては、三間飛車vs急戦、左美濃、居飛車穴熊の三種。
 相変わらず都合のいい解説は健在で(笑)、例えば左美濃や居飛車穴熊では無防備に△7四歩と突いて飛車のコビンを攻められるとか、急戦もやや危なっかしい手順で「これにてよし」で終わったりしている。
 しかし、急所は判りやすく解説されているので、取っ掛かりの一冊としては悪くないと思う。この辺り、いつものツクリという気がしないでもない。

 少し気になったのは、本書は本当に鈴木大介が書いたのか? ということ。どうも今までとは文章の調子が違っているように思えるのだ。
 今までの「鈴木節」は、文体というよりは手順が豪快というか粗雑というか、まぁそこはそれいいじゃん振り飛車が勝てば、みたいな感があったのだが、本書の場合、手順というよりは文体でその豪快感を出そうという雰囲気がむんむんしている……気がする(笑)。いや、それだけ形容詞を使えるようになったと言えばそうなのかもしれないが、それよりはむしろゴーストが鈴木大介感を出そうとしてすべりまくった結果に見えるのだ。まぁ、いまさらゴーストを問題にするのもなんかどうでもいい気がするが、少し気になったので。

(2004.9.14 記)

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 東大将棋ブックス三間飛車道場2 居飛穴vs4三銀
著者名所司 和晴/著

級位者
出版社名毎日コミュニケーションズ 初段〜3段☆☆☆
発行年月/価格2004.8/1,365円 4段以上☆☆☆☆
感想

 三間飛車道場の第2弾は4三銀型。形的には石田流の将棋になる。4三銀はやはり石田流と相性がいい。

 内容としては、石田流に組んだあと△5一角から△7三角とする形と、△4ニ角から△6四角とする形。居飛車穴熊側が▲5六歩と突いた手を咎めるために△5四銀と出る形。それと、向かい飛車に変わって飛車先を逆襲していく指し方の4つである。

 △7三角なんて言うから、てっきり楠本流でも紹介するのかと思ったら、普通に銀冠に組むだけだった。どちらかと言うと大山流という感じだ。△4ニ角から△6四角とする形にも新鮮味はあまりない。△5四銀からの玉頭銀もよくある形ではあるし、向かい飛車については『島ノート』で十分にも思える。
 ……と、正直あまり新鮮さは感じなかったのだが、既存の定跡を網羅的に収録する、というのがこのシリーズの目的なのだろうから、これはこれで仕方がない気がする。特に三間飛車はあまり定跡が整備されていない印象があるので、まずは舗装工事から、ということなのだろう。

 編集的にも、一応、初めての試みがいろいろなされている。「黄色本」で懐かしい定跡百科シリーズで採用した形勢判断記号だとか、図にいろいろ注釈を入れるだとか。
 読みこむのではなく辞書として使う場合、これらは非常に役に立つだろう。本文を読まなくてもその形のよしあしがパッと判るから。
 また、最終ページには、まとめのような格好で各章の基本図が載っている。しかし各章ということは全部で4つなわけで、たった4つの図面を載せてどれほど役に立つのか……? と思ってしまう。むしろ各章ごとに1ページ4図面くらいにしたら、もう少し目次的な使い方ができるかもしれない。

 とりあえずしばらくは三間飛車道場しか出さないそうなので、少しずつでもいいから改良して欲しい。
 そう言えば、各章に入る前のオープニングの解説部分が、図面3段組ではなく2段組になっていた。これ、そんなにたいした事がないように見えるが、見栄えが全然違う。これは個人的になかなかヒットだった。

(2004.9.2 記)

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 第一線棋士! B級に落ちても輝け中年の星
著者名青野 照市/著

級位者
出版社名清流出版 初段〜3段
発行年月/価格2004.8/1,575円 4段以上
感想

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 注釈康光戦記
著者名佐藤 康光/著

級位者☆☆☆
出版社名浅川書房 初段〜3段☆☆☆☆
発行年月/価格2004.8/1,575円 4段以上☆☆☆☆☆
感想

 著者の自戦記をまとめた本。
 ただし、書名に「注釈」とある通り、ただ今までの原稿をまとめただけではない。著者にインタビューをして、内容の疑問点や当時との感覚の違い、自戦記より更に突っ込んだ著者の意見などを各章末にまとめている。なんとなくヲタっぽいというか「注釈で笑いを取る」的な感じはなくもないが、本書の主題は間違いなくそこにある。

 自戦記を雑誌などに掲載する場合、あまりに個人的に突っ込んで内容に言及するわけにはいかないし(それはそれで面白いと思うが)、時間が経ってそれを読む場合、将棋の結論が変わっていたりしてそのまま内容を鵜呑みにもできなくなる。そういったフォローが、まずこの「注釈」によってなされている。
 それだけではなく、インタビューを通じて、著者の将棋、棋士に対する考え方などにも触れている。
 棋士はそんなに文章がうまい人ばかりではないし、自分の意見をうまく表現できないこともある。しかし、編集がその辺りをうまく誘導尋問(笑)することによって、当人がただ書く以上の濃い内容を引き出せている。実際、著者の考える「将棋」「棋士」「センス」といった内容が、非常に判りやすく、そして面白く書かれている。

 自戦記そのもののレベルも非常に高いのだが、むしろこの「注釈」の部分を読み取って欲しい。
 アマ高段になって、もう一つ棋力が伸びない人。そんな人には是非とも勧めたい。きっと「足りない何か」がなんなのか判るはずだ。

(2004.9.2 記)

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 将棋名人戦 第62期
著者名毎日新聞社/編

級位者
出版社名毎日新聞社 初段〜3段
発行年月/価格2004.8/1,890円 4段以上
感想

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 四間飛車の急所2 急戦大全 上
著者名藤井 猛/著

級位者☆☆☆
出版社名浅川書房 初段〜3段☆☆☆☆☆
発行年月/価格2004.8/1,575円 4段以上☆☆☆☆☆
感想

『四間飛車の急所1』に続く、藤井猛の四間飛車解説本。
 今回は5七銀左戦法に絞って解説している。もっと具体的に言うと、5七銀左の形から派生する急戦──山田定跡や鷺宮定跡、端角、ナナメ棒銀──についての解説である。
 ▲5七銀左の局面を基本図として、そこから振り飛車が△5四歩△6四歩△1二香△4三銀と指した場合のそれぞれについて、非常に深く解説している。
 これ以外の急戦、棒銀や4五歩早仕掛けについては3巻で、振り飛車が4一金のまま待機する形については4巻でそれぞれ解説する。急戦だけで全3巻という、かなりボリュームのある内容となっている。

 読んでみて驚いたのは、本当に手順が「システム化」されていること。本書を読むと、居飛車の仕掛けのパターンのようなものがよく判ってくる。
 ▲5七銀左の急戦の場合、端角のような特殊な形を除いて、大体が「▲3五歩△同歩▲4六銀」「▲3五歩△同歩▲同飛」の仕掛けとなる。あとは、これにバリエージョンが加わるだけだ。▲6八金直と入れてみたり、先に▲3八飛と回ってみたり、▲6六歩と突いておいて角を捌かせないようにしたり。同様に、振り飛車側の形も限られてくる。
 本書は、この「パターンの組み合わせ」が実に判りやすく書かれている。居飛車はABCというパターンがあり、振り飛車はXYZというパターンがある。Aの仕掛けをすると最終地点はこの形で、Xだと振り飛車が得だがYだと居飛車が得になる。よって居飛車はXではこの仕掛けはせず、Bの仕掛けを選択し……といった具合である。もちろんこういった書き方ではないのだが、読み進めて行くと、このパターンの組み合わせが嫌でも頭に入ってくるようになる。

 システム化されている、というだけでなく、一つ一つの手順が実に「正直に」書かれている。よくありがちな定跡書のような、どちらかにひいきするということは一切ない。妥協をすることなく、居飛車が有利な手順ははっきり居飛車有利だと言い切り、しっかりと対抗策を考えてある。そのため「形勢不明」「互角」という結果も多いが、それは正直さの裏返しということで納得しよう(笑)。
 また、実戦的な手順も数多い。
 例えば下図。

    【▲4六銀まで】
後手の持駒:歩
 9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・ ・ ・v桂v香|一
| ・v玉v銀 ・v金v飛v銀 ・ ・|二
| ・v歩v歩 ・v歩 ・v角v歩v歩|三
|v歩 ・ ・v歩 ・v歩 ・ ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v歩 歩 ・|五
| 歩 ・ 歩 ・ 歩 銀 ・ ・ ・|六
| ・ 歩 ・ 歩 ・ 歩 ・ ・ 歩|七
| ・ 角 玉 ・ 金 銀 ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ 金 ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:なし

 ▲3五歩△同歩▲4六銀と仕掛けたところで、大体こういう局面で後手は△3六歩とするものだ。しかし、この形に限ってはという条件付き(厳密には違う。正確な表現は本書で確認して欲しい)で、△4五歩と突く手を紹介している。
 △4五歩には▲3三角成△同銀▲3五銀と出る。居飛車がやけに調子がいいようだが、△3四歩と更に屈服の歩を打ち、▲2四歩△同歩▲同銀△同銀▲同飛に△3三角▲2一飛成△2二飛▲同龍△同角とおなじみの捌きをしてみると、意外や意外難しい、というのだ。
 詳しい手順、形勢判断の根拠などは実際に本書を手にとって確かめて欲しい。ちなみに、この筋を応用した指し手も別のページで紹介されている。本書がシステム化を目指していること、また、実戦的な指し手が豊富に載っていることの証拠でもある一事だ。

 本の体裁の部分にも、様々な工夫が凝らされている。
 一番目を引くのは「藤井ファイル」と題された、各章のアタマに設けられたページで、このページで大体の流れは全てつかむことができる。極論を言ってしまえば、有段者の場合、立ち読みでそこだけさらえば本書の9割は読んだことになる。その気になれば20分もあれば十分に理解できるだろう。
 というように立ち読みの人も配慮したレイアウトになっており……じゃなくって(笑)、まずこの「藤井ファイル」を読めば済むようになっている。詳解ページもきちんと振ってあるので、ここで形を調べて、具体的に解説にすぐ飛べる、というような、辞書的な使用がしやすくなっているのだ。これはなかなか画期的なことだと思う。
 また、各章の冒頭には樹形図もあるので、振り飛車がどう待ち、居飛車がどう仕掛けるつもりかという大体の流れもつかみやすくなっている。

 著者渾身の一冊であり、シリーズだと思う。
 そしてまた、その意をしっかりと汲み取った素晴らしい編集だと思う。
 居飛車党も振り飛車党も、ぜひ一度読んでみて欲しい。
 単なる定跡書、というだけでなく、真理を追究する学問的な面白さまでもが味わえる一冊だ。

(2004.8.13 記)

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 新 谷川浩司全集 3
著者名谷川 浩司/著

級位者☆☆
出版社名毎日コミュニケーションズ 初段〜3段☆☆☆
発行年月/価格2004.7/1,785円 4段以上☆☆☆
感想

 新、となっているが3、というよく判らない題名になっているが、これはおそらく「新装丁」という意味だと思う。今回から、本の表紙がハードカバーっぽい厚い紙質になっていた。

 内容自体は、そんなに変わり映えはしていない。いつもの通りの実戦集である。
 冒頭にインタビューがついていたが、これはいままであったっけ……?(←買ってないので確認できない)

 谷川ファンは買い。その他の人は、ちょっと微妙。本書に限らず、こういう類の本は、きちっと読みこなせる人でないと買っても意味がないと思うので。

(2004.7.19 記)

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 谷川流寄せの法則 基礎編
著者名谷川 浩司/著

級位者☆☆☆☆
出版社名日本将棋連盟 初段〜3段☆☆☆☆☆
発行年月/価格2004.7/1,365円 4段以上☆☆☆☆
感想

 今度は谷川が寄せの本を出した。『光速の寄せ』は歴史に残る名著だと思うが、さて本シリーズはどうなるか……。

 形式としては、よくある寄せの本とそんなに変わらない。
 詰めろ、必死、1手すき2手すきといった言葉の定義から、簡単な寄せの紹介、囲いの種類と特徴など、一般的な項目が並ぶ。非常に簡潔に書かれているので、カタログとして読むなら十分だろう。
 ちょっと目を惹いたのが、「この局面でどの駒があれば詰むか?」という問題。
 確か『将棋世界』で連載していたものの焼き直し(かそのままか)だと思うのだが、これはなかなか骨があった。しかも、当時の講座では「この局面でどの駒があれば詰むか? できるだけパターンを挙げよ」という問題になっていて、エラい高度だなぁ〜と感心した記憶がある。本書では、多少優しくするためか選択式になっているが、それでも「基礎」かぁ? と思ってしまうほど高度だ。腕に覚えのある方は、このページだけでもいいから読んでみるといいだろう。

 今後の方向性がいまいち判らない感はあるが、谷川が寄せの本を出す、ということに意義があると思う。
 県代表レベルの本、というのも期待してみたい。いや、もし出たら出たで、白砂なんかには手に負えないけど(笑)。

(2004.8.6 記)

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 強くなる実戦詰将棋120題
著者名伊藤 果/著

級位者
出版社名日本文芸社新風舎 初段〜3段
発行年月/価格2004.7/840円 4段以上
感想

 

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 東大将棋ブックス中飛車道場 4 6四銀・ツノ銀
著者名所司 和晴/著

級位者
出版社名毎日コミュニケーションズ 初段〜3段
発行年月/価格2004.7/1,365円 4段以上
感想

「終わり」と確か書いていたと思ったのだが、なぜか発刊された中飛車道場第4弾。
 今回は矢倉(流)中飛車とツノ銀、風車について解説している。

 矢倉流中飛車を簡単に説明すると……。
 最初中飛車にして△5三銀△6四銀と強気に構え、相手が居飛車穴熊を目指してきたら△4五歩から△4二飛として捌きを狙い、また、相手の陣形によってはこちらが振り飛車穴熊に囲う……という硬軟織り交ぜた戦法である。
 手順もシンプルなので、アマチュアでも十分に指しこなせるだろう。5二飛・6四銀という形自体は昔からあったが、居飛車穴熊に対して△4五歩〜△4二飛で捌ける、ということを発見したのが矢倉流の功績だと思う。
 最近徐々に増えている形でもあり、また、話題にもなっているので採り上げたのだろう。終わったものに追加する、というのに躊躇があったかもしれないが、この柔軟な姿勢は素直に評価したい。

 一方、ツノ銀・風車の方は少し物足りなかった。
 特に風車の方は、「〜にて一局」ばかりでなんの面白みもない(笑)。いや、風車そのものが実戦的な戦法なので、解説がしづらいというのは判る。しかしそれにしても、もう少しなんとかならなかったのかと思う。

 せっかくだから、矢倉流中飛車だけで一冊として、ツノ銀・風車でもう一冊、そっちは急戦持久戦をきちっと解説する……とでもしてくれればよかった。せっかく立ち上げ直したのだから、それくらいの筆は割いてもいいと思う。
 矢倉流中飛車の解説を書いたものの、分量が足りなかったんでツノ銀と風車を足しましたぁ……みたいな感じでちょっと厭だ。

(2004.7.19 記)

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 役に立つ将棋の格言99
著者名週刊将棋/編

級位者
出版社名毎日コミュニケーションズ 初段〜3段
発行年月/価格2004.7/1,365円 4段以上
感想

「金言玉言新角言」「大覇道伝説」などの流れをくむ「実戦的格言」本。

 今回もまた、実戦的な格言が多く出てくる。
 格言が99コもあるので、これは少し無理がないか……というものもいくつかあった(笑)。これだけの実戦的格言を取り揃えるのは大変だったろうから、その辺は察してあげるのが大人というものだろう(笑)。

 大会前などに、パラパラとめくるだけで、なんとなく力がつきそうに感じる本だ。
 白砂は昨日見つけてそのまま買ってきたのだが、就寝前のローテーション読書を計画している。見開き構成になっているので、数分間の読書にはもってこいだ。

(2004.7.19 記)

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 桂馬飛びはなぜ妙手を生むのか
著者名永松 憲一/著

級位者☆☆
出版社名新風舎 初段〜3段☆☆
発行年月/価格2004.7/1,680円 4段以上☆☆
感想

 なんと言うか……。

わけわからん。

 実戦における桂馬飛びの妙手を抜き出し、何故それが妙手となったのか、また、何故それが妙手に見えるのか、そのメカニズムを探る……という本ではない
 なんだか六角形がどうとか、囲碁だのチェスだの他のゲームではどうとか、歴史的に見てうんちゃらとか、はっきり言ってしまうと、

これ将棋の話じゃない

 立ち読みでよかった……(笑)。

 少し真面目な話をすると、内容そのものはとりあえず面白く読めた。白砂は数学とか嫌いじゃないんで。ただ、最初に述べた通り、将棋の本だと期待して読むと泣くことになる。
 もう一度読むか……? と聞かれると困るけど。

(2004.7.1 記)

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 東大将棋ブックス三間飛車道場 1 居飛穴vs5三銀
著者名所司 和晴/著

級位者
出版社名毎日コミュニケーションズ 初段〜3段☆☆
発行年月/価格2004.6/1,365円 4段以上☆☆☆☆
感想

 東大将棋シリーズが今度は三間飛車に進出してきた。
 ここのところプロの三間飛車の採用も増えているようだし、アマチュアでは石田流を含めていまだに人気戦法の一つである。待っていた人も多いんじゃないだろうか?

 で、第一巻はというと……

古いよ

 今時真部流ってなんだよ……。
 いや、中田功も本を出してるけど、やっぱ中田といえばXP。この△6四銀型は真部流だと思う。で、この指し方が出たのは昭和の頃。なにしろ『居飛穴なんかコワくない』に出ているのだから相当昔だ。
 いまさらこんなこと解説されてもなぁ……。

 まぁ、古い定跡をさらっておくのは大事なことだし、ひょっとすると新手もいくつか入っているのかもしれない。しかし、どうにも読んでいて新味がなかった。
 どうせだったら、最近流行りの急戦定跡とか、XPとか、石田流とか、そういう方面で攻めて来てくれた方がよかった。厭な表現を使えば、本書は「とりあえず出した」感が強い。

 余談を一つ。
 真部流の場合、振り飛車が玉側の桂を跳ねるか跳ねないかが意外と悩ましかったりする。△8五桂の端攻めがあるために跳ねておきたい気がするが、前出の『居飛穴なんかコワくない』では、玉が弱くなるし、それより重要な手があるので跳ねない方がいい、となっていた。
 ところが、誰だったか忘れたが、ある学生強豪は桂を跳ねる派だったらしい。
 氏によると、まず真部流に組んで桂も跳ねる。で、機を見て△8五桂と端攻めに桂を跳ね出し、空いた7三に△7三銀と引いて玉を固めるんだそうな。この4枚美濃は相当固いので、穴熊にも攻め合い負けしないらしい。
 白砂が学生の頃に又聞きで聞いた話なのだが、△7三銀という手の感触は今でも覚えている。
 なんの参考になるか判らないが、ま、余談ということで(笑)。

(2004.7.1 記)

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 加藤流最強三間飛車撃破
著者名加藤 一二三/著

級位者☆☆☆
出版社名毎日コミュニケーションズ 初段〜3段☆☆☆☆
発行年月/価格2004.6/1,365円 4段以上☆☆☆☆☆
感想

 まさかここまでシリーズ化するとは思わなかったのだが、加藤大先生の第3弾が出た。
 今回は三間飛車破り。三間飛車の本、というだけである程度貴重なので、その意味でも価値が高い本だ。

 内容はオーソドックスな桂を跳ねて急戦、という変化から、『振り飛車破り超急戦ガイド』に載っていた桂を跳ねない急戦、棒銀から▲4六銀(4六銀戦法ではなく、▲4五歩のあとに単騎に銀が出て行く米長新手)まで、かなりバラエティーに富んだものになっている。これにまず驚いた。
 次に驚いたのは、意外と三間飛車がよくなる変化も書いていること。『ホントに勝てる振り飛車』にもあるとおり、後手三間への仕掛けは成立しているようなので、まぁ先手(居飛車)有利になるというのは判らないではない。ただ、深浦本にある変化を否定していて、しかもそれが一応深浦本よりも深く解説してあるのだ。
 具体的に言うと、深浦本では、▲4四銀で飛車を逃げても先手よし、というところで打ち切っている。しかし本書では、▲4四銀に飛車を見捨てて△4一香と打つ手を解説していて、▲3三銀成△4八香成▲同金△5七銀で振り飛車もやれるとしている。実際にその変化でやれるのかどうかはともかく、こちらの方が深く「解説」していることは間違いない。

 正直、定跡編はゴーストなんじゃないの……? と思ってしまった。大先生らしさ(笑)がないのだ。それどころか、ところどころで「先程はこうやってダメだったので今度はこの手を……」といった感じできちんと立ち止まって解説してくれている。カトピンさんはこんな親切な書き方してたっけなぁ……?

 まぁ、それだけ判りやすく書いているわけで、かつまたいろんな戦形についても触れているので、対三間飛車というものを一通り知っている……という初段前後の人は参考になると思う。ただし、変化をばっさり切っている戦形もあるので、その部分については自分で補完しなければならないので、その点は少し苦しいかもしれない。
 それより上の人にとっては「常識」の部分も多いだろうから、立ち読みor図書館で足りるだろう。逆にそれより下の人は、本書は少し難しすぎるかもしれない。別の本、例えば『ホントに勝てる振り飛車』などをまずは読むべきだろう。

 あ、実戦解説とコラム(?)については、間違いなく本人が書いてます。本人電波がゆんゆん出てます。
 よって、ファンの人は当然買い(笑)。

(2004.7.1 記)

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